パースペクティブ(約3分)

プライベート・エクイティのリターンに持続性はあるのか?

シュローダー・キャピタルの新しい調査によると、プライベート・エクイティ市場の一部の分野では、過去のパフォーマンスが最も参考になりうる可能性があることが示唆されました。

2022年8月30日
Is there persistence in private equity returns?

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私たちの新しい調査によると、あるビンテージで上位四分位に入ったプライベート・エクイティ・ファンドの内、36%のGPにおいて、次のビンテージでも上位四分位に入っていたことがわかりました。また64%のGPは第2四分位数までに入り、下位四分位となったのは16%にとどまりました。

これは1980年以降に資金調達を行った、3,512のプライベート・エクイティ・ファンドを分析(最低2つのファンドを組成したGP、かつ、組成後まもないファンドのパフォーマンスは変動が大きく信頼性が低いため、7年以上が経過したファンドのみを対象)した結果です。

プライベート・エクイティのパフォーマンスに関する免責事項には、過去のパフォーマンスは将来の投資成果等の指針にはならず、繰り返されない可能性があることが繰り返し述べられていますが、それは事実です。しかし、この点に関して、上場株式とプライベート・エクイティのファンド間で考慮すべき差異があるのでしょうか。

私たちの分析では、プライベート・エクイティ・ファンドの過去のパフォーマンスは、将来どのようなパフォーマンスを発揮するかを考える上で、有用な情報を提供する可能性があることが示唆されました。

これは上場株式ファンドの場合とは全く異なる結果です。最近のある調査によると、ある5年間に上位四分位に入った上場株式ファンドが、次の5年間に下位四分位に転落する確率の方が、上位四分位を維持するよりも高いことが分かりました。

一方で、低いパフォーマンスとなったプライベート・エクイティ・ファンドに関して、下位四分位のファンドを運用するGPは、次号ファンドも下位四分位となる傾向があります。また、下位四分位となったGPが次号ファンドで上位にランクインすることはほとんどありません。

さらに掘り下げてみると、この傾向は北米とヨーロッパ、そしてバイアウトとベンチャーキャピタルの両方に投資を行うジェネラルなファンドで強く見られることがわかります。重要なことは、このパフォーマンスの持続性は統計的に有意であるということです(詳細に関しては末尾の「分析の説明」をご参照ください)。一方で、この傾向は、アジアに投資するファンドにも当てはまりますが、同程度の統計的な有意性はありません。というのは、アジアに投資するファンド数は少なく、確固とした結論を導き出すには限界があることが影響しています。

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出所:Preqin、シュローダー、2022年

注:1980年以降のPreqinデータベースに登録された3512本のプライベート・エクイティ・ファンドの分析に基づく。最低2つのファンドを組成したGPで、組成後7年以上が経過したファンドのみを対象。内部収益率(IRR)および投資家に返還された投資資本倍率(MOIC)に基づき算出されたパフォーマンス四分位数、手数料控除後

1パフォーマンスの持続性は、有意水準1%でのカイ二乗検定(2つのデータ変数群の関連性を調べる)に基づき統計的に有意。アジアは有意水準5%。この検定は、GPのファンドのパフォーマンスが、次号ファンドのパフォーマンスに関連する可能性がどの程度あるかを評価するもの

 

大型ファンドは中小型ファンドに比べ、良好なパフォーマンスを維持することができない傾向

ファンドを規模別に分析したところ、顕著な結果が得られました。良好なパフォーマンスの持続性は、小型ファンドで最大となり、中型でも強力な有意性が見られましたが、大型ファンドでは弱い結果となりました。

一方で、下位のパフォーマンスとなったファンドは、どのファンド規模においても継続性を示しました。即ち、下位四分位のファンドとなったマネージャーは、次号ファンドでも下位四分位にとどまる可能性が高いということです。

これは、プライベート・エクイティの投資家にとって重要な結果であり、特に、多くの投資家が大規模な運用会社によって運営される大型なファンドに投資していることを考えれば、なおさらです。これらのように、大型ファンドの過去のパフォーマンスを詳しく調べることは、思っているよりも価値がないかもしれません – その意味でパフォーマンスの免責条項はやはり正しかったのです。しかし、ファンド数でプライベート・エクイティ業界の大半を占める、中小型ファンドのパフォーマンスを見る場合には、過去のパフォーマンスは有益な情報となりえるかもしれません。

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過去の運用実績は将来の投資成果等を示唆あるいは保証するものではありません。 

出所:Preqin、シュローダー、2022年

注:1980年以降のPreqinデータベースに登録された3512本のプライベート・エクイティ・ファンドの分析に基づく。最低2つのファンドを組成したGPで、組成後7年以上が経過したファンドのみを対象。内部収益率(IRR)および投資家に返還された投資資本倍率(MOIC)に基づき算出されたパフォーマンス四分位数。5億ドル未満のファンドを小型、5億ドルから20億ドルは中型、20億ドルを超えるファンドは大型と分類。

1パフォーマンスの持続性は有意水準1%のカイ二乗検定に基づき、統計的に有意。この検定は、GPのファンドのパフォーマンスが、次号ファンドのパフォーマンスに関連する可能性がどの程度あるかを評価するもの

結論

私たちの分析では、プライベート・エクイティにおいて、大型ファンドを除くすべての主要な分野で、プライベート・エクイティのパフォーマンスの持続性を示す証拠が得られました。上位の好成績をおさめたマネージャーは、次号ファンドでも良い結果を出す可能性が高くなります。一方で下位のマネージャーは、次号ファンドでも下位のパフォーマンスが継続する可能性が高いでしょう。

過去のパフォーマンスだけに基づいて投資判断を下すべきではありませんが、これらの事実は、投資家が過去のパフォーマンスを無視することができない可能性を示唆するでしょう。

分析の説明

本調査では、プライベート・キャピタルに関するPreqinのパフォーマンスデータベースを用いました。ただし、パフォーマンスが低いファンドでは、ファンドマネジャーからの任意のデータ提供がほとんどないため、Preqinのデータベースは選択バイアスの影響を受ける可能性があります。Preqinは、情報公開法(FOIA)や規制当局への提出書類、プレスリリース、ニュース、ウェブサイトの体系的な処理など、様々な他のアプローチを使用して、これらのデータ欠損を制限することを目指しています。

Preqinのデータベースには、9,834のファンドが登録されています。私たちの分析では、ファンドは「クローズド」(資金調達が終了している)または「清算済み」のいずれかであり、また7年以上経過したファンドのみを分析対象としています。これは、パフォーマンスの変動が大きく、信頼性が低い、立ち上げ期のファンドを避けるためです。ビンテージは1980年以降のファンドのみを分析対象としています。各ファンドのネットIRRまたはネットMOICのいずれか(理想的には両方)が入手可能でなければなりません。単一の資産からなるファンドと、1号ファンドしかないGPは分析対象から外しています。これらのフィルターを適用すると、分析ユニバースに含まれるファンド数は3,512に減少します。

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