インパクト投資における重要な4つのテーマと実際の投資事例

投資家は、インパクト投資を実施する際に4つの主要なテーマに焦点を当てることで、より高いインパクトの創出を達成できると考えます。

2023年7月3日
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著者

ヴェロニカ・ジュスティ=ケラー
ヘッド・オブ・インパクト・マネジメント、BlueOrchard

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スイス再保険が実施した調査によると、自然災害による経済的損失は、2022年には約2,750億米ドルに到達したと推定され、過去と比較しても、より頻繁に、且つより過酷な局所的異常気象が発生しています。この傾向は今後も続くと予想されており、加えて、災害発生の分布とそれに伴う損失は、貧困で苦しむ人々や気候変動に対して脆弱な環境に身を置く人々により深刻な影響を及ぼすと想定されます。

自然災害の影響の度合いは、それぞれの国の経済構成によって異なります。例えば、世界の最貧困層の約3分の2は農業に生計を依存していますが、農業は気候変動の影響をより大きく受けるセクターと考えられます。また、このような貧困層の人々は、保険に加入していないことが多く、気候変動に対処する術を備えていません。

スイス再保険によると、2050年までにネット・ゼロという世界的な目標を達成するためには、約270兆米ドルの投資が必要とされています。そのため、気候変動ファイナンスを増やすことは極めて重要であり、同時に大きなビジネスチャンスとも考えられます。

インパクト投資

ネット・ゼロへの移行を支援するにおける「公正な移行」のためには、併せて脆弱な人々への社会的影響も考慮する必要があります。

ブルーオーチャードでは、4つの重要なテーマに焦点を当て投資を実施することが重要だと考えています。

気候変動抑制(Climate Change Mitigation

気候変動抑制の投資は、温室効果ガス排出の削減、防止、または回収に役立つ投資機会を特定し、評価する手法です。これは、持続可能な輸送、再生可能エネルギー、エネルギー効率化、または自然資本への投資等を通じて実現することが可能です。

例えば、ブルーオーチャードでは、欧州最大の水耕栽培の温室を建設するプロジェクトに投資を実施しました。この最新鋭の建物は、サッカー・コート55面分を超える規模を誇ります。このプロジェクトは、廃水処理施設からの廃熱を利用し、作物の炭素強度を75%も削減し、生産性を約50%向上させるものです。水耕栽培は、畑作に比べて水の使用量が10分の1であり、農薬の使用も不要で、無駄が一切ありません。

投資という観点からのプロジェクトの基準は、もちろん顧客ニーズと合致していなければなりません。多くの顧客(本件においてはその多くが年金基金)は、長期的かつ安定的なインカムゲインを要求します。顧客の負債にマッチする長期的な投資が必要であり、今回のプロジェクトやその他のインフラ・プロジェクトはそのような観点で合致しています。

また、インドで電気自動車の充電インフラを整備している企業にも投資を行っています。インドの自動車産業は現在世界第5位の規模を誇り、2030年には第3位にまで成長すると予想されています。同国における交通機関の電力化は、脱炭素化のパズルの大きなピースとなるでしょう。

ブルーオーチャードの投資は、286基の充電ステーションが直ちに展開され、1,130台のe-バスが利用できるようになるものです。これは、同等のディーゼルエンジンやガソリンエンジンで発生すると計算される、年間5,351トンの炭素排出を回避する量です。投資対象企業は、インドの37都市で、1,500以上の電気自動車(EV)充電ステーションを稼働もしくは建設しており、3,000以上の充電ポイントを保有しています(20233月時点)。同社は、2019年にグジャラート州アーメダバードでインド初の電気バス50台分のEV充電ハブを、2022年にパトナでインド初の太陽光発電によるEV充電ステーションを受託しています。

循環型経済(The Circular Economy

循環型経済への投資は、廃棄物や汚染を排除するシステムを使用する企業等を対象とします。ブルーオーチャードは、投資先の選別において、持続可能なプロセスで生産され、保管、再利用、リサイクルが可能な素材を使用した製品やサービスを選好しています。

ブルーオーチャードのプライベート・エクイティ・チームは、不要になった製品を売買できるCtoC(消費者間)取引プラットフォーム提供の主要企業への投資を行っています。このモデルは、大幅な成長機会をもたらすと考えます。私たちは、リコマース(中古品取引)や「セカンド・ハンド・エコノミー」の重要性が、今後数年で大きく高まると予想しています。

中古で取引されるすべての製品は、新しい製品を生産する際に発生する材料、生産コスト、エネルギー、その結果としての二酸化炭素排出を回避することができます。もちろん、リコマース・モデルにも物流や販売管理が必要であり、環境コストもかかりますが、新品の生産と流通に比べれば、大幅に抑制されます。

特に不況の時代には、悪いイメージを付されることなく、中古品取引を主流として開放することで、より多くの人々が、以前は手に入れられなかったような商品に手が届くという恩恵を受けることができるようになり、大きな社会的利益があると考えます。

気候変動適応(Climate Change Adaptation

気候変動適応への投資とは、個人、中小企業、地域社会の気候変動に対する耐性や回復力を向上させる方法を見つけることと言えます。具体的な例としては、気候保険ソリューションを提供する企業や、気候保険や気候リスク評価へのアクセスを改善する新しい技術に投資することが挙げられます。

ブルーオーチャードでは、エマージング国で農業を営んでいる人々が、農業への備えに不可欠なリスクデータを取得できるよう手軽に使える携帯電話の活用を支援しています。このシステムは、必要不可欠な天候追跡データと、収穫量向上に役立つ農業アドバイスを提供します。例えば、降雨傾向に関する情報により、農家の人々は灌漑や農薬の散布についてより適切な判断を下すことができるようになります。

ソーシャル・インクルージョン(Social Inclusion

最後のテーマである「ソーシャル・インクルージョン(社会的包摂)」の投資とは、貧困層に対する経済的成長機会や金融サービスへのアクセス改善を提供することで、包摂的で公平な社会に貢献する投資を指します。これは、持続可能な開発にとって極めて重要な要素です。サステナブル・インフラや社会住宅へのアクセス、雇用の創出や維持のためのソリューションなど、さまざまな投資が考えられます。

例えば、シュローダー・グループの不動産投資チームは、管理するビルの環境特性を向上させるとともに、周辺地域の経済的・社会的活力を高めるインパクトのある方法を見出しています。ロンドン南部の賑やかなエリアでは、オフィスビルに加え、住宅や地域の公共施設、小売店などを新たに建設する先駆的なプロジェクトに取り組んでいます。再開発プロジェクトは、ビル1棟を対象とすることもあれば、町の中心部から周辺エリア全体までを対象とすることもあります。再開発プロジェクトはネットゼロを目指す上で重要な方策として注力しています。

サステナビリティへの投資の成功は、インパクトとESGの管理システムの強固さによって決まります。業界のベストプラクティスに合致し、独立機関からの検証を受けた厳格なインパクト・フレームワークへの支持は高まっています。

上述の4つの重要なテーマがサステナビリティの旅路におけるガイドとなり、資本を意義あるものに振り向ける助けとなるでしょう。

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ヴェロニカ・ジュスティ=ケラー
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