歴史は繰り返す

2022年7月14日

著者

古谷 卓也
アナリスト

今回は景気循環、とくに工業サイクルについて考えている事を共有したいと思います。長く株式市場に携わっていると何度も景気循環の上昇局面、下降局面とそれに対する株式市場の反応を経験してきました。その時々の需要の牽引役とその調整のきっかけはそれぞれ違うのですが、根本的な構造は似ています。需要動向の強さがある一定期間継続すると、見通しがそれにともなって構造要因だとみなされ、在庫を含む投資が過剰になってしまいます。それが何かのショックで需要に変調をきたすと、それまでのトレンドが逆回転してしまい在庫をふくむ投資発注の抑制が実需以上の売上、生産の低下につながってしまうなど、波を増幅してしまいます。企業経営者も株式市場の参加者も、工業景気は循環するものであると過去の経験や学びから承知しているのですが、構造的に成長するとの過信が多少なりとも支配的になり、それにともなう株価形成も実態の実力値以上になってしまいます。これを逆手にとった投資行動をとる事でアルファを創出することができるのですが、これは経験を積めば積むほど洗礼され、勝率が高くなるので古株には一日の長がでる投資戦略であると思います。足元でまさにコロナ禍で増幅された需要の揺り戻しにより半導体を中心として在庫循環にともなうサイクルの一巡局面が来ております。ある意味、これは想定通りの動きであり、市場参加者もある程度今回はサイクルの織り込みは早く、市場が効率的に動いているので、サイクルからのアルファ創出のオポテュニティは、定性的ではありますが、以前ほどではなかったと感じています。これはグローバルで情報のソースが多様化して、その共有スピードがあがり、あるトレンドの形成がより早く市場に反映されるようになったからだと思います。これが意味することは単純な経験測からのアルファ創出の幅の機会は縮小しているということです。

そういう意味では、我々はさらに一歩踏み込んだ洞察、調査、分析からアルファ創出の機会を広げなければなりません。幸いにも小型株市場ではサイクル毎の上昇サイクルを梃子に、非連続的な新たな構造的成長サイクルに入る銘柄が必ずサイクル毎に出てきます。それに対し、事前の調査分析で準備し、サイクルの下降局面でその分野・銘柄にフォーカスして投資しポートフォリオを入れ替えることでアルファ創出の機会が存在します。長期的な忍耐が必要ですが、地味な足で稼ぐ調査活動が生きてくる戦略です。今まさに、次の上昇サイクルに向けた仕込みの時期ですので、積極的に活動したいと思っています。

本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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古谷 卓也
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