パースペクティブ(約3分)

Reflections On Changeー変化への対応ー

2022年8月17日
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著者

Nathan Gibbs
Client Portfolio Manager, Japanese Equities

私は1982年にジョージ・サラグッドの音楽を知りましたが、今年の7月にロンドンで開催された彼のコンサートに初めて行くことができました。彼の音楽は40年たってもほとんど変わりませんが、コンサートに行ったときに驚いたこととして、この40年で大きく変わったことが二つありました。ロックコンサートに行くのに、私がポケットに老眼鏡を忍ばせていたことが一つ。そしてもう一つが、家を出るときに紙のチケットや財布などを持つ必要がなく、スマートフォンを持つだけで事が足りたことです。

このようなテクノロジーの進化は急速なように見えますが、私の視力と同様に、実は漸進的に変化をしています。これは投資家にとっては、将来を見る上で、その変化を個別企業の見方に反映させることができることを意味します。しかしながら、世界的な新型コロナウイルスの蔓延やロシアのウクライナ侵攻などは非連続的な変化と言えます。そしてそうした変化は投資家の将来を見据える予測力に大きな影響を与えます。つまり、こうした世界的なイベントを金融市場が効率的に証券価格に織り込んでいるとは想定するべきではないのです。

各国の政府が異なったアプローチでこの新型コロナウイルスに対処してきたことは皆が知るところです。一方で、それぞれの政策が期待されたような結果につながったのか、また次のパンデミックでも同じような政策がとられるのかは全く分かりません。唯一調査をすることで分かるであろう知見は、国民レベルでのリスク回避度ではないでしょうか。これは政府による極端な政策に対して国民がどのように反応するかを観察することで見えてきます。

企業にとっての急を要する対応としては、サプライチェーンの構築においてより短距離で強固なものに作り替えていく必要があることです。これはグローバル化の時代からの逆転を意味するかもしれません。当然そこには機会とリスクがあり、サプライチェーンの再構築にかかるコストが消費者の求める正常化と両立するのかは極めて不透明と言わざるを得ません。

そして、こうした長期にわたるコロナ禍の影響は、ロシアのウクライナ侵攻によりエネルギー価格が高騰したことを受けて、さらに悪化しています。戦争による人道的危機もさることながら、これはエネルギー安全保障という観点で極めて重たい意味を持っています。そしてこの問題は長期的なサステナビリティにおいても重要になっています。いまや、世界で原子力発電の新設計画が出てきたり、日本においては既存の原子力発電所の再稼働計画などが現実的な政策対応になっています。

このようなエネルギー政策における劇的な変化をみると、それは防衛政策においても同じことが言えるようです。NATO(北太西洋条約機構)は過去数十年にわたって将来の紛争に備えてサイバー領域やドローンなどのリモート操作の兵器などの対応を進めてきました。しかしながら、突如としてNATOのすぐ隣で、従来型の、つまりは戦車と歩兵が市街地で戦闘を行う、しかも市民も前線にいるという形での戦争が始まりました。NATOはこれから、そうした事態にどのように対処するかを考える必要があります。そしてこうした問題は当然日本も直面する可能性があり、今後は防衛費の手当てが問題になってくるかもしれません。

翻って、投資家である私たちが留意すべきは、政府や消費者がこうした問題や出来事に対して対処をしていく姿勢をもっているのかどうか、です。人間的な心理では、本能的に元に戻ることを志向するわけですが、それは投資家にとっては危険な想定で、2、3年前の常態はもはや存在していないかもしれません。世界的に急速に高まったインフレ率をみても、このことは明らかではあります。消費者や政府は2、3年前と同じことをしようとしても、いまであればいくら支払うことを想定しているでしょうか? そして、そうした変化を投資家は自らの予想や期待に織り込みきれているでしょうか?

 本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

 

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