市場介入

2022年12月19日
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著者

前田 建
日本株式ファンドマネジャー

この秋、政府が過度な円安を阻止するためにドル売り円買いによる為替介入を行いました。

・9月22日 (一回目) 第一印象 焼け石に水 事前の市場コンセンサスは、口先介入はできても実際の為替介入はできまい、やれたとして単独介入では効果限定的という論調。頻繁な口先介入やレートチェックを経て現実味が高まる中、実際に実行に移されると一旦は市場にサプライズを提供した格好になり、5-6円程押し戻されるも次第に元の円安トレンドに回帰。

・10月21日 (二回目) 第一印象 焼け石に水 サプライズではなかったが、やや不意打ちに近いタイミングで実行。再度5-6円程円高方向に急激な調整。一回目同様一時的な効果に留まると考えて、再度トレンド回帰を見込む投資家に押し目買いの機会を提供したかに見えた。水準、タイミング共に1回目以上に市場の行き過ぎを咎める意味では適切と映った。

・その後の展開と印象 二回目の介入直前ににつけた152円近辺が結果的に直近のドル円の高値となり、以後リバウンドするも150円には届かず。以降ドル安円高方向へと転換。介入自体が効いたというよりは、米国金利見通しが変化したことで調整が起こったとの解釈が一般的だが、同時期に重要イベントが発生したことで相乗効果が発揮されたと見ることも可能。

個人的には金融市場における市場介入については殆どの場合、その意義や効果に対して懐疑的ないしは反対という立場なのですが、今回の為替介入は少なくとも純粋な投資の観点に照らして考えると、適正価値からの乖離や投資タイミングの観点からは共感できるものでした。現時点で結論付けるのは時期尚早かもしれませんが、結果的には絶妙なタイミングと手法で実行されたように思えます。下馬評が芳しくなかったのに反して一定の成果を上げたことに関しては少し痛快さのようなものを覚えました。

為替介入の歴史を紐解くと過去にも効果的なタイミングでアクションを起こしてトレンド転換の端緒となっていたことがありました。

2011年の円売り介入や1985年のプラザ合意時のドル売り介入がそれに当たります。当時は主要数か国による協調介入だったために、今回と同列には扱えない面がありますが、為替水準の適正水準からの著しい乖離が背景にあったことは共通項で括れるように思います。

他方、2016年9月に日銀が導入し、大量の資金を投じて現在も続けているイールドカーブコントロール(長短金利操作)に関して、世界的なインフレ基調や金利上昇を受けて市場で見直し期待が高まっています。政策の意義や効果については様々な意見があろうかと思いますが、導入後数年を経た今となっては、本来市場原理で決まるべき適切な金利水準を下回る水準で、漫然と長期国債を買い支えているように映ります。限られた資金を適正価値に引き戻す方向へ奇襲的に投入した今回の為替介入とは対照的な部分が多い気がします。投資リターンの観点では間尺に合わない、導入当初の目的に反して結果的に国富を損なう行為になってはいないだろうかと危惧しています。

日本株運用者の視点

本コラムでは日本株式運用チームのファンドマネジャーやアナリストが毎月入れ替わりで、市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

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