日本株運用者の視点

たかがファンドマネジャー

2017年09月07日

前田 正吾

前田 正吾

取締役 日本株式運用統括

1987年のニューヨーク市場の大暴落、ブラックマンデイの頃からファンドマネジャーとして30年日本株式市場と対峙してきましたが、退職することにしました。アナリスト時代を含めれば35年となります。長い年月を経てようやくコーポレートガバナンスが改善し始めた日本の株式市場の将来に期待しています。
数年前ある機械メーカーの社長との少人数でのミーティングに参加しました。業績はピークから大きく下がり本格的な回復の兆しもなく、経営陣からも期待感を持たせるような話はありませんでした。あるファンドマネジャーが、社長に対してかなり厳しい言葉で批判的なことをまくし立て席を立ちました。その後、この会社は目覚ましい業績の回復、そしてピーク利益の更新を達成し、株価はこのミーティング時に比べ10倍になりました。残念ながら自分には見る目がなく、この目覚ましい躍進を十分に捉えることはできませんでした。途中退席した傲慢なファンドマネジャーのおかげで会社が奮起したということではありません。同業として彼には今でも腹立たしい気持ちでいっぱいです。
コーポレートガバナンスの向上の為、経営陣にファンドマネジャーやアナリストが意見を述べる機会が以前に比べ各段と増えたので敢えて言いますが、我々はたかがファンドマネジャー、アナリストに過ぎないということです。何百人、何千人、何万人の生活に影響する経営に物申す時は、やはり相手に対してリスペクトを持ち、相手の主張を十分聞き、吟味して対応すべきです。またガバナンスの評価において見かけだけの条件設定で○×をつけて総合点を出すような評価では全く不十分であるということです。仏作って魂入れずと言われるように組織図上とてもしっかりして見えた会社が実は中身は機能しておらず、粉飾決算で投資家を大いに苦しめるという例は記憶に新しいと思います。
ファンドマネジャーとして、日本の事業会社の低収益性はどこから来るか長年考えてきました。つまるところ株主軽視ということだと思います。衰退していく市場で勝算もない事業をなぜ縮小し他の事業に資源を回すか株主に資金を戻すかができないのは株主資本のリターンを高めるという使命感を経営陣が共有していないからではないでしょうか。上場が社会的地位向上につながり、人材募集にも有利になると考える会社が多いのですが、それは上場の本質的な目的ではないはずです。上場企業として、どう株主の期待に応えるか東証はすべての会社に上場前、そして社長、CFOが交代するたびに数日間の研修を義務付けるべきだと考えます。また現在の二部市場銘柄をすべて一部に替え、ガバナンスにおいて著しく問題のある企業を二部に指定替えする制度に改革したらどうでしょうか。昨今のコーポレートガバナンス重視は金融資本主義の行き過ぎだと批判する大手企業のトップの方のインタビューを読みましたが、こういう方こそ上場株式会社の責務とは何か基礎的な研修を受けなくてはいけないと痛感しました。
さてファンドマネジャーを辞めた後は、長年のテーマであるなぜ資本主義は日本に根付かなかったのかを研究したいと思っています。またもし機会を頂けるのであれば社外取締役となり、今度は会社の立場からアナリストやファンドマネジャーの諸君と意見を交わしたいと願っております。

本コラムでは、日本株式運用チームのファンドマネジャー、アナリストが毎月入れ替わりで市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。

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