臨時レポート

エマージング債券:2016年の見通し

2015年12月18日

ジェームス・バリノー

ジェームス・バリノー

エマージング債券・対ベンチマーク運用共同ヘッド

  • エマージング債券市場は調整局面を経た結果、米ドル建てエマージング債券の対米国国債のスプレッドは過去5年の水準と比べて魅力的になっています。
  • 米連邦準備制度理事会(FRB)が市場予想通り12月に利上げを実施したとしても、利上げの織り込み程度について論じるのは難しいといえます。
  • FRBが予想外に積極的な利上げに動かない限り、スプレッドが過去平均程度の水準に戻れば、2016年は穏やかなプラスのリターンは達成可能と考えます。

 厳しい環境であった2015年を終え、エマージング債券市場にとって足かせとなっていた様々な問題は徐々に解決されつつあります。

 2015年、エマージング債券市場に生じた諸問題は、エマージング市場の内部要因によるものといえます。また、先進国間での異なる金融政策を背景とした米ドル高、市場の乱高下(ボラティリティ)も加わりました。2016年を迎えるにあたり、エマージング債券に内在する諸問題は徐々に解決されるとみています。当資産クラスに対して悲観的な見方が大勢を占める中、外的要因の改善は投資環境の改善に寄与すると思われます。

キーポイントは成長

 2015年、経済成長に関する問題が特にブラジル、ロシア、中国といった主要国において目立ちました。ブラジルについては、現在の深刻な景気後退の出口が見えませんが、通貨安は対外収支と長期間低迷していた競争力を改善させると考えられます。ロシアについては、原油価格の急落という環境の中で様々な政策が奏功しており、最悪期を抜けたという兆候も見られます。中国のインパクトは最も大きく、経済成長に対する課題は依然残っていますが、現在、グローバル経済成長の減速という制約を受けながらも、消費者主導型のモデルへの移行が進行しています。ハードランディングの確率は低く、安定的な成長を予想しています。その他エマージング諸国については、投資家はエマージング諸国が減速は見られるものの、常に先進国の成長率を上回っているという事実をないがしろにしています。ベネズエラ、ブラジル以外のラテンアメリカ諸国の成長率は2.5~3%となっており、ロシア以外の欧州エマージング市場についても同様の成長率となっています。また中国・インドを除くアジアについては概ね3%以上、インドに至っては約7%の高成長を維持しています。投資家にとって2015年は、エマージング市場の減速を引き金とした危機が懸念される一年となりました。しかし、各国の財政政策は依然慎重であり、金融政策については景気刺激策となるほどの過度な緩和は行いませんでした。外貨準備金が減少する中、外貨を通貨安の阻止という無駄な試みには投じませんでした。様々な政策の組合せは十分ではないにせよ、来年の緩やかな経済回復の為に必要な条件を満たしていると言えます。

マクロ環境が重要

 グローバル要因によって、エマージング市場に対する悲観的な見方が強まりました。投資家の目には、コモディティ価格の急落と、エマージング市場のマイナス見通しとの間に相関性が生まれたと映っています。コモディティ価格が回復せずとも、安定しただけであらゆる資産、とりわけ通貨に安定をもたらすと見ています。エネルギー・資源関連投資が下方調整されており、このシナリオ実現の蓋然性が高まっています。しかし、エマージング市場の動向を左右するのは米ドル高です。2013年5月の「テーパー・タントラム」以降、エマージング通貨は平均で約40%下落しました。 このため、流動性の枯渇、CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の大幅な拡大、通貨ボラティリティの上昇が生じました。たとえFRBが市場予想通り12月に利上げを行ったとしても、利上げの織り込み度合いを議論するのは難しいでしょう。もし利上げサイクルが控えめであることが判り、米ドル高が膠着した状態となれば、通貨は安定もしくは上昇するでしょう。この結果、各国中央銀行は、低インフレに対して低めの金利水準で対応し、外貨準備高の減少は止まり、成長見通しも改善することになるでしょう。

資産価格は抑制された回復見通しを反映

 調整局面を経た結果、米ドル建てエマージング債券の対米国債券のスプレッドは、過去5年の水準と比較して魅力的となっています。格付けによりますが、現在の水準は過去と比較して80~90%程度割安となっています。スプレッド拡大の状況下、当資産クラスに対する懸念があるにもかかわらず、エマージング債券(米ドル建および社債)は今年3%のプラスのリターンを生み出しました。FRBが予想外に積極的な政策を打ち出さない限り、スプレッドが平均水準に戻れば、来年穏やかなプラスのリターンは達成可能です。現地通貨建て債券については、米ドル次第でしょう。しかしながら、利回り水準は過去5年で最も高く、投資家は通貨リスクに対するリターンを享受できる環境にあります。実質為替レートは適正から割安の間にあります。このため、グローバル市場の見通しに対するポジティブサプライズが出れば、現地通貨建てエマージング債への投資は、グローバル債券市場の中で最も収益を生み出す資産の一つになりうると見ています。

 

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