市況
11月のグローバル債券市場は、主要国の国債利回りは低下しました。米国は、連邦準備制度理事会(FRB)が2会合連続で政策金利を据え置いたことや、経済指標で労働市場の減速やインフレの鈍化が示されたことを受けて、米国債利回りは低下しました。また、月末には、FRB高官の発言等を受けて、来年の利下げを織り込む動きが強まりました。なお、当月は短期債利回りに比べて、中・長期債利回りの低下が大きくなりました。欧州も、欧州中央銀行(ECB)ラガルド総裁の発言や、ドイツやスペイン等ユーロ圏各国のインフレ率の鈍化等を受けて、ドイツ国債利回りは低下しました。英国でも、2会合連続で政策金利が据え置かれたほか、失業率の上昇や住宅市場の停滞を受けて景気後退懸念が台頭し、来年の利下げの可能性を見込む動きが強まり、英国債利回りは低下となりました。
11月の国債市場では、米国10年債の利回りは4.93%から4.33%、ドイツ10年債の利回りは2.81%から2.45%、英国10年債の利回りは4.51%から4.18%に低下しました。クレジット市場については、グローバル投資適格社債の対国債超過リターンは1.57%と、国債をアウトパフォームしました。
パフォーマンス
11月の超過収益は0.18%となりました。
金利戦略は、グローバルに長期債利回りの低下幅が大きくなるなか、米英のスティープ化ポジションがマイナスに寄与した一方、ポートフォリオ全体のデュレーション長期化がプラスに寄与しました。また、スウェーデンのO/W(利回り低下を見込むポジション)もプラスに寄与しました。
通貨戦略は、豪ドルが割安との見方から月半ば以降韓国ウォン、米ドル、ノルウェー・クローネ等複数の通貨に対してO/Wを拡大し、小幅ながらプラス寄与となりました。
クレジット戦略は、欧州の投資適格社債のO/Wが奏功したほか、機動的にCDSで取得した米国ハイイールド債のエクスポージャーもプラスに寄与しました。その他、米国モーゲージ債やカバードボンドのO/Wもプラスに寄与しました。
投資行動・投資方針
マクロ経済シナリオ分析では、引き続き「ソフトランディング*1」の実現可能性が高いとの見方は維持しているものの、ハードランディング*2の実現可能性をやや上昇、ノーランディング*3の実現可能性をやや低下方向で変更しています。金融環境は、全体的には経済成長の緩やかな減速という見通しと整合的であると思われます。よって、ソフトランディングを基本シナリオとする見方を維持しています。米国の消費者はこれまで経済全体を力強く支えてきました。2023年7-9期の国民総生産(GDP)では、消費支出は前期比年率4%増という驚くほど力強い伸びを示しました。しかし、消費者は足元2つの重要な点で逆風に直面しています。1つ目に、パンデミック関連対策が打ち切られ(例えば、学生ローン返済の一時停止措置の終了)、財政支援が薄れてきています。データでは、ここ数カ月で貯蓄水準が大幅に低下していることが示されています。憂慮すべきものとしてクレジットカードの深刻な延滞者数の急増が挙げられ、四半期ベースで過去25年間で最大の急増となっています。2つ目は、労働市場のデータに明らかな軟化傾向がみられることです。直近の経済指標では、雇用の伸びが鈍化し、製造業とサービス業の雇用先行指標が大幅に低下しています。
これまでのところ、労働環境が徐々に緩和していくとの見方と合致していますが、運用チームではこのトレンドを注意深く見守っています。また、欧州の成長見通しを引き続き懸念しています。製造業は、軟調な中で安定化の兆しが見られるものの、サービス業は重力に逆らうことをやめ、製造業に追いつきつつあるように見受けられます。経済成長の弱さは、金融引き締めのユーロ圏経済への効率的な浸透を反映しており、欧州中央銀行(ECB)はこれまで実施してきた金融引き締めが十分であるとの認識を徐々に深めているとみられます。
このような見通しに基づき、金利戦略では、イールドカーブのスティープ化への確信度を維持し、米国、英国、カナダでのポジションを継続しています。クレジット戦略では、証券化商品やカバード・ボンド等高クオリティながら同等の格付けの国債に比べて相対的に高い利回りを提供するセクターを引き続き選好します。社債では、米国対比で欧州の投資適格社債を選好いたします。通貨戦略は、米国が利上げサイクルの終了に近づいてきたことや労働市場の減速を鑑み、米ドルに対して若干の弱気姿勢といたします。
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