市場環境
11月は、米国の主要経済指標が市場予想を下回ったことでFRBの利上げ観測が後退、米長期金利の低下を背景とした世界的な株高の流れを受けて日本株も大幅上昇となりました。TOPIX(配当込み)は月間では5.4%の上昇となり、年度初来では+19.9%となっています。
出所:Bloomberg
主要戦略運用パフォーマンス
市場動向としては、テクノロジー関連が強く、精密機器、電気機器などが上昇相場をけん引したほか、サービスや資源関連、機械や自動車関連なども上昇しました。一方で金利低下を受けて銀行、その他金融、保険などが弱く、食料品、陸運、公益などのディフェンシブ業種も軟調でした。前月からのリバーサル傾向が強く、大型グロース株が大きく上昇し、サイズでは大型株優位、スタイルではグロース株が比較的大きくバリュー株をアウトパフォームする結果になりました。
弊社の主要戦略のパフォーマンスは、小型株、マイクロで大きくアウトパフォームして、グロースもアウトパフォームだったものの、コア、サステナブルではアンダーパフォームし、オポチュニティ、イールドでもスタイル影響も大きくなってアンダーパフォームとなりました。
パフォーマンス一覧速報(対ベンチマーク超過収益)
出所:Bloomberg、シュローダー、各戦略コンポジット(運用報酬控除前)、超過収益は対ベンチマーク、TOPIX配当込及びRussell/Nomura Small Capインデックス、Micro Capインデックス
人材立国の行く末
植田 龍也
日本株式 アナリスト
本コラムでは、日本株式運用チームのファンドマネジャー、アナリストが毎月入れ替わりで市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。
今、日本は一つの深刻な危機に直面しております。未曽有の人材不足という危機です。
生産年齢人口(15-65歳は)は1995年にピークを打ち、総人口も2008年で天井を打つ中、女性・高齢者の労働参加で騙し騙し引っ張ってきた労働力人口も2022年の6902万人から漸減すると各種人材会社が予測しております。
これまでは人口減少が叫ばれつつも、労働力人口という供給が微減ながらも増えていたことや各事業者の血のにじむ業務効率化により、各業界への影響はある程度緩和されておりました。いよいよ供給がマイナスに転じる中、需要が若干の増加を想定すると、需給ギャップの開きは加速度的に厳しさを増していきます。リクルートワークス研究所が「未来予測2040」にて2040年の労働の需給ギャップを1100万人と試算し、「労働供給制約社会」と警鐘を鳴らしておりますが、今よりも遥かに厳しい人手不足の環境がもう瀬戸際まで迫ってきております。
この状況下で私の担当カバレッジである鉄鋼・非鉄金属、人材、サービス、建築セクターでも取材時に影響をよく耳にします。直近では、2024年の残業規制への対応により建設業・物流業の需給が急激にひっ迫しており、鋼材・機械を運ぶドライバー不足から配送運賃の値上げに踏み切っている会社の話を聞きました。建設業では再開発需要、工場新設需要などが旺盛で、施工を担う職人や施工管理技士不足の影響が物件コスト上昇や工期の遅れといった点にまで発展しています。また悪いケースでは、今後受注を増やすことが難しいなど、短期・中期的に売上へのキャップとなってしまっている会社も散見されます。人材業界は基本的に人手不足の恩恵を受ける会社が多数ですが、派遣会社を中心に一人当たり採用費用の増加が収益性への下押し要因となり始めている会社も見受けられます。
2023年は企業側の人的資本に対する真摯なアプローチという点が開示面でも多く見受けられ、女性・若手中心に魅力を訴求する会社が多く見られました。
応募者側も豊富な口コミサイトで待遇を比較検討する事が容易な世の中ですので、業界の垣根を超え、優秀な人材を惹きつける会社がどこになるのか、長期的に人材長者となり、高い売上利益を創出し続けられる会社に今後も注目しております。
今回の東証の要請は日本における上場企業の変革を投資機会ととらえる上で、人的資本の観点からも非常に重要な役割を担っていると考えています。弊社においても、投資先企業とのエンゲージメントを通じて、上場企業のポジティブな変化を実現できるよう努力してまいります。
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