2018年市場見通し 欧州株式

2018年の欧州株式は一段の上昇が期待できると見ており、欧州企業の収益性改善、低インフレ継続、企業のファンダメンタルズが株価変動の主要因となる市場環境の3点が支援材料となると考えます。

2017年12月27日

著者

ローリー・ベイトマン
投資部門共同責任者兼株式部門グローバル責任者
  • 欧州経済の回復が続き、欧州企業の利益率は回復傾向にあります。
  • 低インフレ環境下では株式市場のバリュエーション上昇が許容されます。
  • 引き続き、銘柄固有要因が株価の主要な変動要因となると見ています。

 

2017年の汎欧州株式市場は堅調な推移が続きましたが、2018年も好調を維持する見通しです。MSCI Europe株式指数は、2017年年初来で足元まで約9%上昇し(ユーロベース)、長期で見た欧州株式のバリュエーションは過去平均の水準に近づいています。そのため、足元の市場はとりわけ割安な水準にあるとは言えません。

しかし、2018年は次の3つの要因から株価の一段の上昇が見込まれると考えています。それは、企業の利益率の改善、低インフレ、株価変動の相関の低下です。

企業の利益率見通し

欧州経済はまるで超大型タンカーのようで、方向を変えたり、スピードを加速したりする際は動きが緩やかです。しかし、世界的な金融危機や欧州債務危機の後、域内景気の回復スピードはようやく本格的な水準まで上昇してきました。

経済状況の回復は需要を支えており、欧州企業の収益性も改善しています。これは、企業側の価格決定力が向上していること(需要を減少させずに、企業が製品・サービスの価格を上昇できること)が一因であると考えています。また、経済の余剰生産能力が活用されるにつれ、企業はコストを抑えつつ生産を増やすことが可能となっている点も一因であると見ています。

ただし、欧州企業の利益率は足元で改善を見せていますが、米国企業との比較では、依然劣後しています。2000年代には欧州企業と米国企業の利益率の傾向は総じて似ていましたが、その時の状況とは対照的です。この差が縮小されるには、複数年を要すると見ています。欧州経済の成長回復が好調である中、足元の利益率改善が続けば、企業は市場コンセンサス利益予想を上回る成長を達成できると予想しています。

デフレの見通しは後退したものの、低インフレの環境が継続していることは、株式投資家にとって好材料であると考えています。これは、人口動態の変化、技術革新など、複数の要因によるもので、デフレが進行していた数年前よりは高いとしても、インフレ率は低い水準が継続すると見ています。

低インフレは株式投資にとって追い風

低インフレの環境下では、株式は債券など低利回りの資産の代替候補となりうるため、リスク・プレミアムの低下が予想されます。リスク・プレミアムとは、安全資産利子率(例えば、国債利回りなど)を上回るリターンのことであり、相対的に高リスクである株式などの投資によって得られると期待されます。そして、株式に求められるリスク・プレミアムの低下は、株式のバリュエーションが過去の平均より高い水準となったとしても、その裏付けとなるでしょう。

このような市場全体の見通しの一方で、セクター間の状況に目を向けるとバリュエーションには大幅な差が見られます。低インフレの他に、2018年に欧州株式市場を下支えする要因として考えられるのは、セクター間の相関の低下です。

株式市場における相関が低下

銘柄間、もしくはセクター間で、同じ方向へ動く関係を相関と言います。過去数年間にわたり、株式市場では量的金融緩和策などのマクロ経済要因に一様に左右される動きが見られ、相関が高水準となっていました。結果として、アクティブ運用の投資家は、株価の上昇が見込まれる銘柄と見込まれない銘柄とを選別する際に、銘柄のファンダメンタル分析が有効でないと感じていたと思います。

そのような投資環境は変わり始めたと見ており、セクター間およびセクター内の銘柄間の相関が低下する傾向が続くと考えています。株価がマクロ経済要因につられて上昇する銘柄もあれば、強固なファンダメンタルズが正当に評価されて上昇している銘柄もあります。その違いは、銘柄間の相関が低下するにつれて、見分けやすくなると考えています。

この投資環境は、銘柄固有要因の分析を重視する投資家にとって追い風となると考えます。低相関の投資環境においては、マクロ経済の大きなテーマに着目するのではなく、個別銘柄を選別することによって、より高いリターンを達成できると考えています。

株価の変動幅が大きい投資環境においては魅力的な投資機会が存在する

2017年年初は、予定されていたフランスの大統領選の成り行きなど、欧州の政治状況に対する投資家の懸念が高まっていました。しかし、中道派マクロン氏が勝利したことによって、株式市場に安心感が広がり、政治に対する懸念が後退しました。

しかし、欧州の政治情勢に対する懸念は完全には払しょくされていません。ドイツでは連立政権樹立に向けた交渉が決裂し、スペインからの独立を問うカタルーニャ自治州では住民投票が実施されました。また、イタリアでは2018年5月に総選挙が予定されており、英国は欧州連合(EU)離脱の交渉を継続しています。

政治のイベントを背景に株価変動性が大きくなった場合は、投資の好機であると考えています。政治リスクによって、銘柄の株価は企業ファンダメンタルズが反映されていないバリュエーションの水準まで過度に下落する可能性があります。これは、アクティブ運用の投資家にとって、投資の好機となり、非常に魅力的なバリュエーションの水準で銘柄を購入できると考えています。

ユーロ圏の景気回復は順調に進み、中央銀行は規模を縮小しつつも、金融緩和政策を継続しています。加えて、政治の先行き不透明感からユーロ安が進むことがあれば、欧州の輸出関連銘柄にとって好材料となるでしょう。

 

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