過半数を獲得する政党が不在という結果に終わったイタリア総選挙

2018年3月7日

中道右派やポピュリズム政党の躍進を背景に債務危機の再燃が危惧されるものの、イタリアがユーロ圏や欧州連合(EU)から離脱するリスクは依然として低いと考えられます。

イタリアはこれまでも政治的に安定した国として認識されてきた国ではないことから、今回のイタリア総選挙の結果は驚きをもって受け止められている訳ではありません。2018年3月5日現在、いずれの政党も過半数を獲得するには至っておらず、ポピュリズム政党が躍進したことは潜在的な懸念材料であると考えています。

出口調査によれば、中道右派連合の得票率が最も高く、単独政党としては反体制派政党である「五つ星運動」の得票率が最も高く第1党となる見通しです。与党・民主党の得票率は第2位となっているものの、同党を中心とした中道左派連合の得票率は、中道右派連合や「五つ星運動」に及ばず第3位となる見通しです。

いずれの政党も過半数獲得には届いていないことから、再選挙を避けるためには、大連立政権の樹立が必要となりますが、政権樹立に向けた交渉は難航が予想されます。

中道右派連合については他の政党との交渉を開始すると見られますが、中道右派連合をどの政党が率いるのかは不透明な状況です。

ベルルスコーニ元首相率いる「フォルツァ・イタリア」が中道右派連合を率いるとみられていましたが、「同盟」(旧・北部同盟)の得票数が「フォルツァ・イタリア」を上回る可能性も出ていることから状況は不透明といえます。

脱税で有罪判決を受けたベルルスコーニ元首相は公職に就くことができないため、首相候補者となるには1年以上先とみられていましたが、このような状況下で81歳のベルルスコーニ元首相が再度首相候補となる可能性は事実上なくなったといえます。「同盟」は地域政党から、反移民・反EUを掲げるポピュリスト運動へと発展してきました。仮に「同盟」が政権を担った場合には、極右政党「イタリアの同胞」などが連立政権に加わることも想定されることから、政治の先行きに対する懸念が高まる可能性もあると考えています。

「五つ星運動」については、仮に他の政党と連合を組むことができれば政権を担う可能性もあるものの、党幹部は過去に既成政党との連立を拒否しています。

連立政権は樹立可能なのか?

イタリアの選挙は小選挙区比例代表並立制に拠って行われ、出口調査が必ずしも選挙の最終結果を正確に反映するとも限らないことから、上下両院での議席獲得数が確定するまでには時間を要すると考えられます。

仮にセルジョ・マッタレラ大統領が各政党を説得し結果として少数与党政権の樹立に導くことができなければ、大連立政権発足という選択肢も存在します。大連立の場合には、政党党首ないしはかつて2011年から2012年にかけてマリオ・モンティが就任した時のように学者や高級官僚といったテクノクラートが首相に就任することになります。大連立政権の樹立が困難な場合には、稀ではありますが再選挙が実施されることになります。

投資家への影響

イタリアの経済規模を考慮した場合、今回の選挙結果は世界の投資家にとっても非常に重要であると考えています。今回の選挙においては欧州懐疑派の政党が躍進したものの、イタリアがユーロ圏やEUから離脱するリスクは低いと考えられます。その背景には、イタリアの憲法では国民投票による国際条約の破棄を禁止していることが挙げられます。また、憲法改正には上下両院で3分の2の賛成票が必要であるものの、現状では左派、右派ともに欧州懐疑派が3分の2の議席を占めている状況にはありません。

むしろ懸念されるリスクとしては、財政悪化と近年成し遂げられた改革の押し戻しが挙げられます。その場合、欧州委員会がイタリア政府に対して財政赤字の削減などを要請する、また結果としてイタリア国債の利回りが上昇する可能性が出てくると考えています。

イタリアの政府債務残高は約2.2兆ユーロにおよび、対GDP比で約133%(2017年末時点ベース)の規模になりますが、極端な主張を掲げる政党が政権を担った場合には、世界の投資家によるイタリア国債の売却圧力が強まり、国債利回りが急上昇する可能性はあると考えています。現時点では欧州中央銀行(ECB)による資産買い入れにより市場の平穏が保たれているものの、年末までにはECBによる量的金融緩和が終了することが予想されることから、イタリア市場は不安定な状況が続くと考えられます。

 

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