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4月半ばより新興国債券市場は下落基調が続いてきましたが、8月中旬以降、同市場に魅力的な投資機会が生まれ始めていると考えます。
歴史的に新興券市場においては弱気トレンドが継続することを示唆する3つのチェックポイントがあると言われており、投資家は新興国債券市場への投資を再開する前に市場がこれらのチェックポイントを通過したか否かを確認すると良いでしょう。我々の分析では、足元の市場はこれらを通過しつつあると考えられ、投資機会が生まれ始めていると考えます。
チェックポイント①:米ドル高=新興国は弱気トレンド継続
米ドルは4月16日以降約5.8%上昇している一方、米ドル建て新興国国債インデックスは約2.3%、現地通貨建て新興国国債インデックスは12.9%の下落となっています。
チェックポイント②:
米ドル高によって新興国と先進国との間に亀裂が生じる=新興国は弱気トレンド継続
この場合、外貨建て債務が多い新興国、つまり経常赤字が大きい国がより強い売り圧力を受けます。例としては、トルコやアルゼンチンを挙げられるでしょう。
年初来で、米ドル建てトルコ国債は約16%、トルコ・リラは約41%価格が下落しています。またアルゼンチンに関しても、米ドル建てアルゼンチン国債が約22%価格が下落し、アルゼンチン・ペソは約45%対米ドルで下落しています。
チェックポイント③:流動性低下に対する政策対応が十分に実施される=新興国の弱気トレンド国債の売りは最終局面段階
アルゼンチンは、IMF(国際通貨基金)から500億ドルの融資枠につき承認を受け、支援が実施されているほか、中央銀行は政策金利を60%に引き上げ、金融政策による通貨防衛対応も行っています。
トルコでは、取引コストの上昇により、投機的なトルコ・リラの売りを抑制するため、トルコ国内銀行と海外投資家との為替スワップ取引に制限が課されました。また、カタールがトルコへの150億ドルの直接投資を表明したほか、財務相が市場の懸念緩和に向けた行動計画を策定したと明らかにしました。
インドネシアは今回の下落の中心とはなっていませんが、市場安定のための積極的な対応として、利上げが実施されました。市場は悪化した投資家心理に対して政策対応がどの程度効果があるのかを見極めようとしている状況です。8月初めから2週目までに、米ドル建てソブリン債インデックスは0.2%、現地通貨建て国債インデックスは1.7%以上下落しました。
過去の例に基づくと、これら3つのチェックポイントを通過すると、新興国債券市場の弱気トレンドは転換点を迎えると考えられます。
転換点:先進国主導の流動性改善=新興国国債は買い
もしグローバルもしくは新興国市場における混乱圧力が、米国のファンダメンタルズに影響を与え始めた場合、FRB(米連邦準備制度理事会)は利上げペースの緩和を示唆することが考えられます。このような中銀の金融政策スタンスのハト派転換は、流動性改善に繋がると考えられ、実際に2016年の初めから2017年に亘る新興国市場の劇的な回復の始まりとなりました。
また、極端な米ドル高、あるいは急速な株式市場の調整による米国景気の減速のほか、貿易摩擦による負の影響が意識された場合も同様の効果を導く可能性があります。
いつ転換期を迎えるのか?
現在通過中のステップ3から転換点まで、どれ程の時間がかかるのかはまだ不透明な状況です。しかしながら、直近起きた新興国債券・通貨市場の下落は急激であり、現在の水準が持つ割安感から同市場への投資を再開する投資家が増加する可能性もあると考えられるでしょう。過去に起きた多くの転換点と同様、転換点の通過を確認してから投資を再開することは投資タイミングが遅れることを意味し、反発局面を十分に捉えきれない結果に繋がる可能性があります。新興国債券市場は転換点の特定が難しいと言えますが、我々は現在この局面が近づいていると考えます。
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