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社債はより割安な水準となり、ファンダメンタルズも良好です。しかし、中央銀行による緩和策が縮小され、金融政策の転換期が迫っている中、国債の相対的魅力度は高まっています。
2018年は、量的緩和から量的引き締めへの政策変更を背景に、グローバルな社債市場にとっては困難な1年となりました。これは、2019年においても再び市場の重しとなる可能性があります。社債市場の見通しは、強弱のバランスがとれたものとなっています。米国のマクロ経済は引き続き堅調であり、投資適格社債・ハイイールド社債いずれの発行体においても概してファンダメンタルズは健全です。しかしながら、金利が上昇し、企業の負債が増加するにつれ、社債に対する需要と投資家心理が低下することによって、これらマクロ経済や企業に関する好材料は相殺される可能性があります。
堅固な企業の財務内容、低位なデフォルト率
投資適格債発行体の収益は依然良好ですが、最近の決算発表においては、米国の税制改革による恩恵が薄れ、成長ペースの鈍化がみられています。しかしながら、依然として利益の伸びは負債の増加を上回っており、自然な形で負債指標の改善につながっています。この環境は、この先2~3四半期継続することが予想されます。
ハイイールド債発行体は健全なバランスシートを維持しつつ、一年を通して収益は堅固な伸びとなりました。特に米国における良好な経済環境、健全な企業収益を背景に、格付け機関であるMoody’sが算出する12か月グローバル・デフォルト率は過去最低値に近い水準となっています。2018年に2.6%であったデフォルト率は2019年後半には2.0%まで低下すると予想されています。また、格付けの傾向も好ましい動きとなっており、6-9か月先のデフォルトを示すディストレス比率についても低位のままとなっています。
懸念点としては、BBB格の投資適格債発行体の増加、そしてハイイールド債発行体によるレバレッジド・ローン市場での資金調達の著しい増加の2点となります。BBB格企業は、現在ブルームバーグ・バークレイズ米国社債指数内において、約半分を構成しており、これは10年前の35%から上昇しています。この大幅な上昇の理由は、保守的であった企業がM&AによりA格からBBB格へ移行したことです。レバレッジド・ローン市場は、経済状況が悪化した際、市場の混乱に対して脆弱であり、社債市場に広く影響を及ぼす可能性があります。
限定的な社債の供給は依然支援材料だが需要は不透明
2018年における投資適格社債の純新規発行額(償還額を控除)は約10%低下しましたが、2019年においても5-10%低下することが予想されます。2018年に発行された社債のうち約20%は、M&Aの為の資金調達でしたが、来年は株式市場のボラティリティ(変動率)の高まりや、最近の税制改革よりM&A活動の抑止が予想されることから、この比率は低下すると考えられます。
ハイイールド社債においては、2017年と同様に、純新規発行額の減少を背景に需給バランスは良好となりました。総新規発行額(償還額を非控除)については、短期的な借り換えの魅力が低下したこと、金利の上昇によって発行体が社債からローンの発行にシフトしたことで1年で約40%低下しました。J.P.モルガンのレポートによると、ハイイールド社債は過去10年で最も供給不足となっており、需給のひっ迫による追い風は継続すると考えています。
需要面では、社債の投資信託の資金フローは、過去3年については堅調な流入がみられましたが、2018年は年末にかけて流出に転じました。投資家は、金利の上昇及び貿易摩擦に関する懸念、そして通貨ヘッジコストの上昇に対して懸念を抱いています。中央銀行による緩和的な金融政策の縮小によって、社債の需要は低下する可能性があります。
投資家は目標リターンを達成するために、信用度の低いクレジットを組み入れる必要がありましたが、金利が上昇したことからその必要性は無くなりました。株式から債券への移行を図る米国の年金基金による長期社債に対する需要は、需給の悪化を軽減する可能性があります。
投資適格社債とは異なり、ハイイールド社債市場は、海外需要による大きな恩恵はなかったものの、2018年は比較的良好に推移しました。これは、今年継続的な資金流出が見られたものの、新規発行が少なかったことが主な理由です。
最近の軟調な動きによって、市場は割安度を増しています。運用チームにおいては、堅固なファンダメンタルズ、魅力的な利回り水準、そして良好な供給状況を背景に、投資家がハイイールド社債の再評価をし、組入れを引き上げる余地があるとみています。
社債市場が再び割安に
株式市場のボラティリティの高まりを受けた投資家心理の転換、原油価格の下落、そして地政学リスクに対する懸念により、社債はさらに割安となっています。グローバル投資適格社債の利回りは、2012年半ば以降最も高い水準となっており、スプレッド(上乗せ金利)は金融危機後の最も低い水準となった2018年初めの時点から50bps(0.5%)拡大しています。堅固なファンダメンタルズと、予想される供給減を背景に、魅力的な組入れ機会が到来すると考えます。
この一年のほとんどの期間において、ハイイールド社債は割高な状況にありました。その他のリスク資産が軟調な局面においても、ハイイールド社債のスプレッドは新発債不足が主な理由で割高な水準で推移しました。ハイイールド社債はデュレーションが短いことから、金利上昇による影響を受けづらく、またハイイールド社債発行体の大多数は国内市場で営業活動を行う企業であることから、貿易問題に関する懸念も強くありません。
投資適格社債同様、ハイイールド社債のスプレッドについても2018年10-12月期に入り原油価格の下落及び株式市場のボラティリティの高まりを背景に拡大し始めており、2018年初めに見られたスプレッド水準を大きく上回っています。デフォルトを取り巻く環境が比較的良好なことから、現在の価格は、市場に投資家の興味を引き戻すのに十分魅力的な水準だと考えます。
2019年は社債にシフトする年に
金融危機後、約10年間拡大してきた米連邦準備銀行(FRB)のバランスシートについては、2018年9月に危機後初めて縮小しました。欧州中央銀行(ECB)は、2018年末までに社債買い入れプログラムを完了し、その他中央銀行についても資産買入れの縮小を開始するとみており、運用チームはこれら金融政策の転換が社債市場に及ぼす影響について注視していきます。
2019年の社債市場については、供給低下による支援材料が需要に対する不透明感によって相殺されるものの、企業のファンダメンタルズは良好であると考えます。社債の割安な価格水準と特に米国における堅固なマクロ経済は、投資家の社債投資に対する興味を呼び戻すでしょう。
個別銘柄レベルにおける固有リスクは、2019年にはより重要なテーマとなり、銘柄選択及びセクター選択を通した収益の創出機会が増加すると考えます。つまり、社債は2018年に割安傾向となったものの、リスクにみあう収益を獲得する為には、規律ある銘柄選択が重要となります。
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