パースペクティブ(約3分)

グローバル株式

2020年12月28日
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著者

アレックス・テダー
グローバル株式・米国株式ヘッド兼CIO

  • グローバル株式の堅調な推移は2021年も継続すると予想されますが、脚光を浴びるのは情報技術銘柄だけでなく、2020年に投資家の選好の対象外となっていた銘柄にも注目が集まると予想しています。その一方で、将来の生活や働き方に大きく影響を及ぼす可能性がある巨大な潮流(メガトレンド)に着目したいと考えています。

足元のグローバル株式は決して割安な水準とは言えませんが、妥当な水準にあると考えています。ウイルス感染のパンデミックによる影響の規模が大きかったことを考慮すれば、2020年のグローバル株式市場は驚くほど堅調に推移し、この動きが2021年も継続すると当運用チームでは予想しています。ただし、株価の回復は過去12か月間で株価が上昇した銘柄以外にも、より広範なセクターに広がると考えています。

ハイテク株 バブルの兆候はない

2020年の株式市場の上昇はハイテク銘柄の狭い範囲の 銘柄のみによって主導されていました。具体的には、アマゾン・ドット・コム(Amazon)、アップル(Apple)、マイクロソフト(Microsoft)、フェイスブック(Facebook)、アルファベット(Alphabet)等の銘柄であり、これらの銘柄は総称してFAMAGsとも呼ばれます。

このような動きとなったのは、これらの企業がそれぞれの分野において支配的であったこと、長期的な収益と利益の伸び率が高水準であること、また、ロックダウン(都市封鎖)の実施により、働き方、社会活動、買い物の仕方などに変化を余儀なくされる環境においてこういった変化に恩恵を受ける企業であるという認識が広がっていたためであると考えます。実際に、これらの銘柄は「ロックダウンの環境下で株式市場をけん引した銘柄」となっています。

今では超大型ハイテク銘柄の時価総額合計は、S&P 500指数の市場全体の時価総額の4分の1を占めています。(2020年8月21日に株価指数全体の時価総額の25%を上回り、その後月末まで概ね同じ比率が継続しました。)

これらの銘柄の市場における集中度が大きいことから、必然的に1999年の「ITバブル」時との比較に注目が集まります。しかしながら、その見方は誤っていると考えます。その理由として第一 に、1999年のITバブルは、投資家が企業の利益や収益に関係なく、ハイテク関連と名の付くあらゆる銘柄に対して投資家が熱狂し購入したことによって起こりました。それに対して、2020年のハイテク・セクター、特に時価総額が超大型の銘柄は、並外れた収益と利益の伸び率を達成しており、これが2021年以降も継続する可能性が高いとみている点で、1999年の「ITバブル」とは異なると運用チームでは考えています。

第二の理由として、歴史的に少数銘柄による集中度を振り返ると、今般の少数ハイテク銘柄による株式市場における集中度は並外れた水準ではないということです。1960年代と1970年代において、S&P 500指数は同様に、AT&T、Exxon、GE、GMなどの少数の大型銘柄によって高い比率で占められていました。

新型コロナウイルスの感染拡大は、eコマースやリモート・ワークなどの新しい技術の活用を加速させました。企業や消費者のこうした行動様式の変化は、パンデミックが収束した後も継続する可能性があるとみています。企業は仕事のやり方を既に変更し、クラウドへの移行や自動化の急速な適用など、「特別に早期承認した」変化を既に進行させており、こうした変化による恩恵が明白になれば、更に一段と変化を加速させる可能性が高いと予想されます。その例としてeコマースが広い分野で活用されることがパンデミックの期間中に示されました。世界の多くの地域においてeコマースの普及率は依然として相対的に低位ですが、今後継続的に大きく伸びる可能性があると考えています。

端的に言うと、「テクノロジーの転換」はパンデミックが起こる前から既に進行しており、新型コロナウイルスの感染拡大によってその転換が加速されただけであると考えています。

情報技術セクターは、今後数年間にわたり、投資家にとって豊富な魅力的投資機会を継続的に提供すると予想されます。当セクターにとって最大のリスク要因は、潜在成長率の急速な低下ではなく、規制強化であるとみています。

株式市場の回復は広範に及ぶと予想

2020年を通して世界中が不確実性に覆われる中、投資家は銘柄のグロース性とディフェンシブ性を重視して相対的に安全と思われる資産に群がり、それが情報技術銘柄の選好という結果につながりました。しかしながら、2020年11月に新型コロナウイルスの有効なワクチン開発が進展したとの報道を受け、2021年から2022年にかけては経済の「正常化」と景気回復につながるとの見方が投資家に広がりました。

これにより、パンデミックの初期の期間に株価が低迷し、投資家の選好の対象外となっていた多くの銘柄に、収益と利益が成長する可能性があると投資家の見方が広がりました。そのうち特に際立ったのは、ホテル、レストラン、レジャー施設、旅行関連などの休業や閉鎖を余儀なくされたセクターの銘柄です。これらの事業は景気回復の局面で、株価は大幅に反発すると予想されます。                             

その他、エネルギー、素材、資本財・サービスなどの景気敏感セクターに対する投資家の期待が一般に低いことから、今後注目する価値があると考えます。エネルギー転換のような大きな構造的変化があり、それが今後これらのセクター内の多くの企業に大きな影響を及ぼすことは明らかです。

しかしながら、一部の企業については引き続き変化に適応し、高成長を遂げると確信しており、2021年は世界の需要の持続的な増加により、そういった一部企業の収益と利益の大幅な伸びが期待できると考えています。

これは資本財・サービスの多くの分野において言えると考えており、営業レバレッジ(固定費を一定とした場合、売上高の改善が収益性の向上にどの程度影響するかを示す。)が世界的にも多くの場合において高水準となるとみているためです。

2021年の株式市場の堅調な動きは、広範囲に及ぶと予想しています。情報技術銘柄は引き続き好調となり、市場で選好の対象外となっている銘柄についても好転すると予想されます。割安なセクターが買われ、割高なセクターが売られる、という単純な動きとは見ていません。米国の投資家で「オマハの賢人」と呼ばれるウォーレン・バフェット氏が「価格はあなたが払うもの。価値はあなたが得るもの」と言う通り、市場の価格の上下に振り回されることなく、その企業の本来の価値を見極めて投資をすることが重要であると考えます。

全ての割安な石油、コモディティ、資本財銘柄が高い価値を生むとは限りませんし、全ての銀行や保険銘柄が高い価値を生むとも限りません。2021年に世界経済が転換を遂げるに伴い、それぞれの業種の中で大幅な乖離が起こる可能性が高いとみています。そのため、銘柄選択が非常に重要であると考えています。

グローバル株式(特に米国株以外)のバリュエーションは依然として相対的に魅力的な水準

グローバル株式の株価は総じて、将来の長期平均と同程度であり妥当な水準にあるとみています。グローバル株式の配当利回りについても、債券利回りを上回る水準であり、米国債より株式が魅力的である要因となっています。

1つの資産クラスとして、2021年のグローバル株式市場は回復が広範に広がり、堅調な推移が継続すると考えています。米国株が世界のその他地域の株式に対して大幅にアウトパフォームした期間を経て、(過去10年間で年率約8%上回りました)、足元の米国株式は長期間で平準化した利益を元に算出した株価バリューションにプレミアムの乗った株価水準で取引されています。一方で、米国以外の地域の株式は大幅に割り引かれた水準で取引されているとみています。

欧州と日本の企業の利益は、2021年に大きく回復し、おそらく2022年も堅調になると予想しています。中国経済は既に回復基調にあり、アジア全体をけん引しています。米国市場は高クオリティのディフェンシブ性を有する銘柄が主導する市場となっており、世界の市場の中で最も流動性が潤沢となっています。安全資産への逃避によって米国市場への資金流入が進んでいましたが、景気回復が広範に及ぶにつれて、この動きは一部反転し、資金は米国以外の地域に流れ始めると予想しています。

米国の新大統領就任による新政策

現時点で米次期大統領として民主党候補のバイデン氏の当選が確定し、連邦議会下院は民主党が過半数の議席を維持する結果となりました。一般的な印象とは違って、民主党政権下では共和党政権よりも株式市場のリターンは上昇する傾向があるという点に注目すべきと考えます。しかしながら、民主党の政策アジェンダが、現共和党政権の政策アジェンダとは著しく異なるであろうことに疑問の余地はありません。

ジョー・バイデン氏の元で新政権は、人種間の格差是正、最低賃金の引上げ、医療保険の拡充など社会支援の充実、適切な環境保護対策など、リベラルな価値観の重視へと転換すると予想しています。これらの政策の多くは、実現することになれば、米国経済の多くの分野の見通しに大きく影響を及ぼすと考えられます。例えば、医薬品の価格引き下げを目指しコントロールすることによって米国株市場のヘルスケア・セクターに大きな影響を与え、また最低賃金を時給15ドルに引き上げることによって、サービス・セクターに大きな影響を与えるとみています。

2020年、米司法省は独占禁止法違反の疑いがあるとしてGoogleに対して1年以上にわたり調査を続けたことにより、大手インターネット会社に対する調査が今後増えることを示唆しました。民主党が新政権となればこの動きが加速する可能性が高いとみています。しかしながら、連邦議会の上院で民主党が過半数を獲得できなかった場合、企業に対する課税を強化して法人税率を28%へ引上げようとするバイデン氏の政策が制限される可能性があります。また医療制度改革など、その他の政策についても法案を上院で通過させることが難航する可能性もあります。

外交政策の観点から、バイデン新政権は中国をけん制する姿勢を維持する一方、欧州やアジアとの関係を強化する可能性が高いとみています。総じて民主党の政治的背景は対立的ではなく、より建設的であり、主要貿易相手国と協調していく方針であろうと予想しています。

メガトレンドに着目した投資はポスト・コロナと関連する

新型コロナウイルスによる被害や、政情不安、景気回復の軌道を巡る先行き不透明感などについての話から一歩離れてみますと、将来の生活、働き方、社会生活、人との交流に大きく影響を及ぼす可能性がある明白かつ巨大な潮流があり、これを多くの人が認識していると思います。

これらの潮流のうちの一部はメガトレンドと呼ばれており、考え方は目新しいものではなく、気候変動、ヘルスケアの革新、都市化の進行、自動化、デジタル化はこれまでも長期にわたり重要なテーマとなっていました。

その他に、サステナビリティ、食料・水の供給、生活スタイルの変化などについても、新興国市場における人口増加や大量消費主義の台頭によって、変化が緊急に必要な重要分野として挙げられます。

全てのメガトレンドに共通する特徴は、2つあります。第一に、人間が消費する地球の資源の量が次第に増加したために、急速に今日的な課題に直結するようになったということです。第二に、これらのメガトレンドがもたらす課題は、どのセクターにおいても、テクノロジーの転換が主導する加速していくイノベーションによって解決されていくということです。

このイノベーションのダイナミクスがメガトレンドに着目した運用を行う強固な根拠となっていると確信しています。当運用チームがそれらの潮流について正しく理解し、評価するアプローチが一貫して運用していれば、そのうち少なくとも1つのメガトレンドのエクスポージャーが、伝統的なインデックス対比の株式運用ポートフォリオのリターンを上回る要因となる可能性が十分にあるでしょう。メガトレンドの多くは異なるセクターや産業を包含するので、それらに資金を配分することは長期的にポートフォリオのリスク・リターン特性を強化する確率が高いと考えます。

「グリーン産業革命」計画への期待

主要なメガトレンド の重要性が急速に高まっている例として、気候変動があります。国連の組織である気候変動に関する政府間パネルIPCC (Intergovernmental Panel on Climate Change)で「安全」と定義された、世界の平均気温の上昇を摂氏2度までに抑えるために、温室効果ガスの排出削減への取り組みに必要な支出額は、今後10年間において毎年少なくとも2兆ドルまで増加する必要があると試算されています。このコストは政府、消費者、企業が負担することになります。

グリーン政策の推進は加速しており、欧州委員会は2030年までに温室効果ガスの排出を削減するとの野心的な目標を公表し、欧州グリーンディール政策では7,500億ユーロの復興対策パッケージの少なくとも4分の1を脱炭素化(化石燃料への依存から脱却し温室効果ガスの排出実質ゼロを目指すこと)への投資に充てることを決定しています。欧州委員会は域内の温暖化ガスの排出を2050年までに実質ゼロにする法案を公表し、また中国も同様の目標を2060年までに達成すると公表しました。

英国政府は、2030年までに洋上風力発電を国内の家庭部門の供給に十分な発電量まで拡大するとの方針を示しました。また、ガソリン車とディーゼル車の新車販売を2030年までに禁止すると発表し、当初目標より5年前倒ししました。

米国ではバイデン氏が新大統領に就任すれば、新政権はこれまでの方針を反転させ、欧州版をモデルとしてグリーンディール政策を打ち出す可能性があるとみています。バイデン氏は既に「パリ協定」への復帰と2050年までに温室効果ガス排出を実質ゼロとする目標を政策として示しています。

成長の機会は膨大にあり、今なお過小評価されていると見ています。現在、低炭素経済への転換は急速に進められています。その最も重要な原動力となったのは、クリーンエネルギー技術の競争力において、化石燃料と競争するための補助金を必要としない程度まで飛躍的な改善がみられたことです。ガソリン車・ディーゼル車や化石燃料発電に代わるものへの投資は足元で急速に増加しており、今後5年間は重要な転換点になると予想しています。

自動車セクターについては、電気自動車(EV)の普及が加速し、今後10年間において世界の新車販売の50%がEVとなり、最終的には普及が100%になると予想され、急速かつ根本的な変化が起こるとみています。

その他のセクターについても、グリーン・エコノミーへの転換は、普及率の予想外の上昇などに伴い、投資家にとって多くの投資機会を提供します。同様に、イノベーションが起きているその他の潮流においても多くの投資機会があると考えています。

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