パースペクティブ(約3分)

株式のバリュエーションが割高であるリスクを許容することができる理由

2021年3月1日
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著者

ヨハナ・カークランド
CIO/マルチアセット運用グローバル・ヘッド

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株式のバリュエーションは割高と判断されるものの、足元ではいくつかの支援材料が存在すると考えることから、株式見通しをネガティブとはしていません。ただし、新型コロナウイルスのワクチンの効果が出始めることが見込まれる2021年の春頃には、また違った状況となることが考えられます。

新型コロナウイルス感染が拡大する環境下、個人投資家による投資市場への参加の増加が興味深いトレンドとなっており、2021年1月にみられた個人投資家の売買によるゲームストップの株価の乱高下は、その代表例といえます。

個人投資家による株式の直接保有は、足元数十年間に亘り減少しており、運用会社として、個人投資家が資産形成の中心である金融市場から遠ざかっていることを懸念しています。このことから、2020年にみられた個人投資家による株式投資のトレンドは、歓迎されるべきであるはずです。しかしながら、ゲームストップのように、一部の投資家の意図的な行動により急騰した特定の株式を買う動きは歓迎されるべきとは言えません。

多くの人々にとって、ゲームストップ株は一回きりの売買で終わる可能性が高いと思われ、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、人々の資産面や健康面が懸念されている状況下、このようなリスクがとられたことを懸念しています。

以前にも個人投資家が金融市場に大きな影響をもたらした局面は存在しており、投資初心者が投機熱に飲み込まれてしまうことは簡単なことです。

これらの動きが懸念される一方、足元で注目している材料は、バリュエーションやその他、市場の原動力についてです。

新型コロナウイルスのワクチンの配布に伴い、株式市場は上昇しており、主要な株式市場のバリュエーションは過去水準と比べ、割高な水準にあるといえます。

以下の図表では、過去15年間の中で、どの市場がどの程度割高・割安であるのかを示しています。市場のバリュエーションを示す25項目のうち、18項目が過去15年の中央値と比べ20%以上割高、3項目が10-20%割高であることが示されており、緑色で示されている僅か2項目が0-10%割安であることを示しています。

図表が示す通り、多くの市場が過去15年間の水準と比べ、足元での水準は割高であると判断されますが、株式に対してネガティブな見通しを持つ理由にはならないと判断しています。シュローダーのデータ・インサイト・ユニット(DIU)のデータは、米国と英国において2021年春頃には新型コロナウイルスのワクチンの効果が見られ始めると示唆しています。景気回復が見られ始めて直ちに、中央銀行が金融政策の引き締めにより景気回復を中断させるようなことはしないと考えられます。

単純に、新型コロナウイルス感染拡大の防止措置として行われたロックダウンの実施が経済にもたらした影響は莫大であるため、米連邦準備制度理事会(FRB)が2021年1月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で景気後退から回復するまで緩和的な金融政策を維持すると表明したように、景気刺激策を直ちに巻き戻すのは現実的ではないと考えます。

つまり、経済が回復へ向かい、債券利回りが低水準で維持されるという環境は、株式バリュエーションにとって支援材料になります。市場は一見バブルであるようにも思われますが、バブルは通常、金利上昇によって崩壊する傾向にあります。これまでのところ、中央銀行は低金利を維持することが見込まれることから、中央銀行による利上げがバブル崩壊を促す可能性は低いと考えます。

他方、インフレについては、過度な上昇圧力を示唆するデータは少なく、上昇を懸念するのは時期尚早であると判断しています。実際に、世界経済回復のシナリオはインフレ率を小幅に上昇させる可能性が高いものの、中央銀行が利上げに踏み切る程の上昇幅とはならないと考えます。

以上のことから、マルチアセットチーム では、中期的な観点から株式のバリュエーションが割高であるリスクを当面許容することができると判断しています。但し、短期的には変動性の高い局面も見られると想定され、利益確定等の対応も併せて考慮していく必要があると考えます。

 

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