欧州ハイイールド社債に着目すべき5つの理由
ハイイールド社債は良好な経済環境の恩恵を受けやすく、かつ、利回りがクッションとなり、金利上昇局面での資産保全の役割が期待できることから、足元の市場環境において着目すべき、魅力的な債券セクターだと考えます。

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歴史的な低金利とインカム源泉の枯渇は、投資家にとっては歓迎されませんが、向き合わざるを得ない厳しい現実で、2008年の世界金融危機以降長きにわたってこの状況が継続しています。昨年の新型コロナ危機時に債券のスプレッド(国債利回りに対する追加的な信用利回り)は瞬間的に急騰しましたが、その後の政策対応や景気回復期待を背景にすぐに元の低水準まで戻っています。
そして、足元は欧米でワクチン接種が進み、経済活動再開に伴う経済回復への期待が高まっています。この流れは企業のファンダメンタルズにとってはもちろん好ましいことですが、同時に債券投資家にとって難しい問題も提示しました。それは、2021年の1~3月に起こったような債券利回りの急激な上昇です。
このような現在の環境やリスクを踏まえると、欧州ハイイールド社債が他に比べて優位なポジションにあると考えます。その理由は5つあります。
数少ないインカム源泉
欧州ハイイールド社債は、魅力的なキャリー(利回り水準に基づくインカム)を提供し、現在においては数少ないインカム源泉を有する債券セクターであり、かつデュレーションが相対的に短いため、金利水準の変化の影響度が相対的に低くなっています。先進国の経済活動再開を受けてリフレーション(デフレーションから脱却し、まだインフレーションになっていない状態)となり、また、2021年の1~3月のように債券利回りが急上昇する可能性があるような環境においては、この特徴は特に重要だと考えます。
欧州ハイイールド社債市場全体の平均利回りは足元約2.5%で、歴史的に見て、特に高い水準にはありませんが、グローバル債券の約20%がマイナスの利回りとなっており、グローバル債券全体の平均利回りが約1%、欧州国債の平均利回りは0%を少し超える水準であることを鑑みると、魅力的と考えます。
デュレーションは利回りが1%上昇/低下した場合にどの程度債券価格が下落/上昇するかを示す指標で、欧州ハイイールドのデュレーションは2020年3月末以降の平均で3.7年、グローバル債券のデュレーションは同期間で平均で7.3年となっています。デュレーションが長いということは、利回りが低下したときの価格上昇が大きい一方、利回りが上昇した場合の損失が大きいことを示しています。
2021年の1~3月は、米国で大型の経済対策が成立したことで景気回復期待が更に高まり、インフレ懸念も台頭しました。結果として、米国債の利回りが上昇し、債券価格は当四半期に大きく下落しました。影響は投資適格社債にもおよび、デュレーションのリスクが改めて意識されました。
景気回復の恩恵
新型コロナウイルス感染拡大がグローバル経済に与えたダメージは非常に大きく、当面の間その影響は残ると考えられます。しかしながら、先進国ではワクチン接種が進んでおり、現在は循環的な景気回復の始まりの地点に位置しているとみられます。今年の経済成長率は米国が6.5%、ユーロ圏は5%、エマージング市場は7.5%超となると予想されています。
ハイイールド社債は、良好な経済環境の恩恵を受けやすい特徴があります。売上および利益の増加が期待されるほか、上場株式の場合、株価の上昇が企業のバランスシート改善につながるケースも多くあります。昨年の新型コロナ危機以降の格下げやデフォルトはピークを過ぎたと考えており、今後は企業のデレバレッジ(負債圧縮)やファンダメンタルズ改善を受けて格上げが増加するとみています。
バリュエーション(割安度)
ハイイールド債券は価格水準の点でも魅力的だと考えており、特に投資適格債券対比で割安だと考えます。今後12ヶ月でどの程度利回り若しくはスプレッドが上昇すると損失が発生するか、という損益分岐水準の観点で見た場合、欧州ハイイールド債券は利回りがクッションとなり、金利上昇局面で資産保全の役割が期待できることが示されています。また、欧州BB債券と欧州BBB債券の利回りを比較してみると、BB債のBBB債に対する比率が、過去2年で上昇しています。
欧州ハイイールド企業はニッチ
ハイイールド債の発行体企業は投資適格債の発行体企業と比べて、分析を行うアナリストが少なく、調査が十分になされていない可能性があります。ハイイールド債の発行体は非上場のプライベート企業であることが多く、詳細な分析を実施することで、ミスプライスによる投資機会を発掘できると考えます。
更には、新型コロナ危機はセクターによって影響の度合いが異なり、足元でも一部のセクターの利回りは高止まりしています。これらのセクターや銘柄は今後の経済活動再開による景気回復の恩恵をより受ける可能性があると考えます。
ECBによるサポート
欧州中央銀行(ECB)は政策金利をマイナスに維持し、投資適格債券の買い入れによるサポートを実施しています。このように中央銀行の緩和的な金融政策によって金利が低水準に張り付いている環境においては、投資家の利回り追求の動きが強まる傾向があることから、ハイイールド債券にとっての追い風となると考えられます。
なお、低金利環境においては、企業の借入コストも低下することから、企業が債券発行を増加させる可能性があります。この場合、その後の金利上昇による借入コスト増加のリスクが大きくなることから注意が必要です。
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