「インパクト投資」という言葉は、投資家が社会的/環境的インパクトと同時に経済的リターンを追求することを可能にする投資におけるアプローチを表します。インパクト投資への注目はここ数年で一気に高まりましたが、概念自体は真新しいものではありません。「マイクロファイナンス」(貧困層向けの小口金融)需要の高まりのなかで開発金融機関(DFIs)が民間セクターで誕生し、民間資本を活用して、エマージング市場におけるフィナンシャル・インクルージョン(金融包摂、すべての人が等しく金融サービスを利用できるようにする取り組み)を推し進める動きが、インパクト投資の始まりでした。その後、融資、債券、株式、仕組み商品等幅広い資産クラスにおいて、世界の開発・発展における重要な課題をプライベート市場におけるアプローチを活用して解決しようという動きが拡大していきました。
インパクト投資は、「社会的/環境的インパクトと経済的リターンは互いに相いれないものである」という通説に対して異議を唱えるものです。インパクト投資戦略は、「投資家への経済的リターンの提供と、投資がなされた地域社会への貢献を同時に実現する投資は可能」という考えに基づいています。この二つの要素は補完的に互いを強化し、より幅広い目的の提供を可能とします。

しばしば、「インパクト投資」、「社会的責任投資(SRI)」、「ESG投資」が同義で使われますが、それぞれのアプローチは明確に異なっています。SRIおよびESG投資は、企業の規範やガバナンスを重視し、投資対象における除外や組入れ基準を設定し、適用する投資を意味します。一方、インパクト投資は、測定可能な社会的/環境的インパクト目標および経済的リターン目標を予め定義し、その目標達成に向けた投資を表します。インパクト投資の世界では、この概念は「ダブル/トリプル・ボトムライン・アプローチ」(経済、環境、社会におけるインパクトを管理するアプローチ)として知られています。

なぜインパクト投資なのか?
現在、世界中の各地で経済的・社会的発展における多くの課題に直面しています。インパクト投資は、グローバルの資本市場の力を貧困や不平等、気候変動等差し迫った問題を解決するために活用できる革新的な手法と言えます。この観点では、国際連合(国連)の持続可能な開発目標(SDGs)が、世界中のインパクト投資のステークホルダー(利害関係者)が参照すべき唯一の指標、「北極星指標」のようなものとなっています。SDGsでは、世界中の政府、企業、市民社会に対し、貧困をなくし、すべての人間が尊厳と平等の下に、持っている潜在能力を発揮できることを確保するためのアクションを呼び掛けています。
SDGsの2030年アジェンダを達成するためには、およそ毎年5-7兆米ドルの投資が必要だと推計されています。エマージング国だけ見ても、投資ニーズと投資額の差、投資ギャップが毎年2.5兆米ドル発生しているとみられています。この推計には新型コロナ危機の影響は含まれていません。この推計から極めて明白なのは、政府による拠出だけでこれらの問題を解決することはできない、民間資本はSDGs達成において必須だということです。

民間資本のなかで、慈善団体による資金は全体の資金調達ニーズのごく一部を担えるにすぎません。よって、民間セクターにとって、投資の促進および増加が果たすべき重要な役割となります。
足元、社会や経済が直面する課題や懸念に対する意識はこれまでになく高まっています。この意識の高まりこそが、インパクト投資の成長を実現する原動力になると考えます。
また、2030年までに主役となっていく新しい時代の投資家は、過去に比べて女性の割合が高く、ミレニアル世代や文化的多様性が高いグループが含まれ、このような投資家は経済的リターンだけではなく、投資資金を活用して社会にプラスの変化をもたらし、より持続的で、自ら責任を担っていく世界へと作り変える機会を追求する傾向があると言われます。これまでは個人的・社会的価値体系に合致するような投資は難しいとの考えが一般的でしたが、徐々にこの考え方が退けられるようになってきており、グローバルの資本市場はこの変化に注目し始めています。
また、政府はインパクト投資の促進・規模拡大を企図し、様々な奨励制度を提供しているほか、規制環境もインパクト投資にとって好ましいものとなってきています。一例としては、欧州連合(EU)によるEUタクソノミーが挙げられます。これは、2050年までに温室効果ガス排出量実質ゼロ(カーボン・ニュートラル)の実現、というEUの目標達成に向けた欧州グリーンディール(脱炭素と経済成長の両立を図る一連の政策)の実施のため、適格な投資分野を特定、分類する仕組みです。真に環境貢献度の高い分野に運用資金や設備投資を振り向ける目的で制定されました。その他、規制関連の動きの例としては、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)が挙げられます。これは、透明性と標準化を高めることで比較を容易にするほか、EUのカーボン・ニュートラル目標に貢献しない「グリーン・ウォッシュ」を防ぐ目的となっています。この規則では投資プロダクトをサステナブル・テーマ投資、ESGインテグレーション、インパクト投資に分類し、ESG若しくはインパクト投資としてプロダクト紹介する場合にはSFDRの条文の下で開示が求められます。
このような環境下、インパクト投資の業界規模が過去数年で4倍超になったというのも納得できると思います。個人投資家のほか、年金基金や保険会社、銀行、ファミリー・オフィス、財団、宗教法人等の機関投資家がインパクト投資への資産配分を大幅に増やしてきています。様々な資産クラスにおいて魅力的で投資可能な投資機会が増加していることもこのような目覚ましい成長に寄与していると言えます。業界の規模が拡大したことでインパクト投資において大規模な投資を行うことも可能となり、投資家需要に応えることができるようになってきています。
インパクト投資の業界規模は直近数年で4倍超に拡大
グローバルのインパクト投資サイズの推移 (単位:10億米ドル)

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