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シュローダーでは2019年に独自のESG評価ツール、「SustainEx」を開発しました。SustainExは、企業業績には反映されていない、企業が社会に与えるポジティブあるいはネガティブな社会的インパクトの評価を目的に構築されたツールです。具体的には、社会的なポジティブまたはネガティブ・インパクトの金額を推計し、個別企業にどれくらいの潜在的なメリットやコストがあるのかを数値化しています。現在、テーマはおよそ40あります。代表的なのは、二酸化炭素、プラスチック、水資源、たばこ、コネクティビティ、イノベーションなどです。
SustainExは既に運用していますが、内容を改善するため、毎年テーマ毎にレビューをしています。私は日本で食品セクターを担当しているので、今回食品ロスに関するワーキンググループに参加しました。ロンドンのESG担当アナリストが主導し、グローバルで各地の関係するアナリストなどが参加しました。
食品ロス・廃棄は大きな社会的なネガティブインパクトがあります。毎年、世界で食品の3分の1が廃棄され、その損害は7000億ドル以上と推定されています。
今回のレビューでは、食品ロスの金額の算出や個別企業への社会的コストの配分方法などで改善できる点がないか議論しました。食品ロスの規模は、いくつかの国際機関やアカデミックな研究を基にどれくらいなのか推計し、経済成長やインフレを加味して最新の数字に見直しました。また、食品ロスが生産者、食品加工メーカー、流通、消費者など、どこで発生しているのかを確認し、それぞれの段階でのコストを推計しました。これらを踏まえ、売上高の規模などを参考に、そのコストを個々の企業に配分することとしました。なお、食品ロスは直接的な廃棄の損害だけでなく、水などの資源の無駄や二酸化炭素などの排出増加になりますが、このような間接的コストは他のテーマとのダブルカウントになるので、外しています。
参加しての気付きは、ESGチームの専門性の高さです。予想以上に詳細で丁寧に調査しています。私も一緒にアカデミックな研究レポートなどを読みましたが、専門的な内容も多く、理解するのは大変でした。チームは各地域から参加したので、ローカルな視点で様々な意見が出ました。毎週のように数回議論し、今回は終了しました。
SustainExは、データに基づいた、よく考えられた分析ツールです。シュローダーの日本株チームでは、こうした分析結果をもとに個別銘柄のフェアバリューにも反映させています。しかし、まだまだ多くの限界があります。1つは、テーマによっては客観的で信頼性のあるアカデミックな調査が不十分なことです。2つめは、まだ企業の情報開示が不足し、かつ定義がまちまちなため、コストの配分には粗い方法を取らざるを得ないこともあり、改善の余地があります。そして最も大事なのは、企業努力で食品ロスの削減に取り組んでいる場合、このプラス面のインパクトをどう反映するべきかです。現在は、削減目標の進捗に応じてコストの調整をしようと検討しています。今後ともESG分析についても完成度向上に貢献したいと思います。
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