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自動車、高層ビル、橋梁、船。鉄はこれらを製造するために必須な元素で、我々が朝起きてから学校・職場に行くまで鉄製品を目にしないことは無く、近代文明の礎を担うといっても過言ではありません。鉄は世界では年間18億トンと最も消費される金属で、紀元前3000年から鍛造され文明の発展に大きく貢献してきました。
ただ近年の日本株市場においては甚大なCO2排出量に加え、需要が大きく変動すると数千億円の利益から一気に赤字に転落する程、収益のボラティリティが激しく、先行きが読みづらい事業環境に置かれた難しい銘柄群です。また、日本では既に人口は減り始めており、鉄鋼を大量生産・消費していた高度経済成長期とは需要環境が全く違うというのも鉄鋼株への投資を難しくしています。ただ、平時は割安で放置されている分、10年に一度世界的に需要が大きく上昇するような局面で大幅にアウトパフォームする傾向があるセクター群で、例にもれずコロナ後の2020年後半から2021年にかけて、株価は大変上昇しました。
この鉄鋼セクターは現在世紀に一度の大変革の最中にあります。それは世界的な地球温暖化を抑制するためのCO2排出量規制です。現在の主流な製法は1キロ10数円の安価な石炭を焚き、高温に熱した炉の中に鉄鉱石を投入し還元反応を以て純度の高い鉄を取り出す高炉という製法です。ただ2000度に達するまで大量の石炭を燃やし鉄鉱石を熔かす必要があるため、CO2排出量は1トンの鉄を製造するために2トンものCO2を排出します。故に既に製造された鉄製品をスクラップとして再利用する、CO2排出量が高炉の5分の1の電炉への転換が世界的に再注目されております。ただ、電炉も完全ではなく、外部環境により電気価格が左右される事、不純物が高炉程は取り除けない事等欠点もあります。また、日本は年間の粗鋼生産量が8000万トンほどですが、一方発生する鉄スクラップの量は半分の4000万トンと十分なスクラップの量を確保できるわけではありません。既存の技術だけでは2050年のカーボンニュートラル目標は到底達成不可能で、水素還元炉やCO2の回収・貯蔵等、国と民間が緊密に連携し、足並みを揃えて研究開発を進める必要があります。
今後どのような新技術が実用化されるのか、金銭的・環境コストを抑え高品質の鉄を確保するためにどれだけの投資が必要なのか、はたまた鉄とは全く別の素材が台頭するのか、鉄鋼業界から目が離せません。
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