砂糖に対する消費者の懸念と政治意識高まる
近年、世界で砂糖がタバコと同じように社会的に注目され、食品・飲料メーカーにとってのリスクとなりつつある。砂糖摂取量の増加に対する消費者の懸念や政治意識が高まっていることがその背景にある。例えば、砂糖の含有量についてインターネットの検索件数が増加傾向にあるのをご存じだろうか。政治やメディアの活動を背景に関心が高まっており、食品・飲料メーカーにとっては課題となっている。
リスクの中心となっているのは、糖分の過剰摂取が原因とされる糖尿病や高血圧といった生活習慣病である。過去15年間、巨額の罰金や訴訟和解金を経験してきたタバコ企業と、食品・飲料メーカーには共通点があると言える。
シュローダーは、2015年以降、問題に関してさらに分析を行うと同時に、各種団体と連携して投資先企業へのエンゲージメント(建設的な対話)を積極的に行ってきた。
投資家はより健康志向の強い投資先を選好する傾向に
肥満率や食生活に関連する病気の罹患率は過去最悪となっている。世界に健康志向が広がる中、大手食品・飲料メーカーは規制の強化や政策の変更、労働生産性の低下、消費トレンドの変化、訴訟の可能性などといった、“次のタバコ”になりかねないリスクに直面している。
その一方で投資家は、ヘルスケアやフィットネス、栄養補助食品関連の企業といった、健康志向の流れをくんだ投資先を選び始めている。食品・飲料メーカーのうち、将来を見据えた企業は、より健康的な製品で市場シェアを高めていくものと考えられる。これらのトレンドに適応できない企業は、市場からの逆風にさらされることになる。しかし、こうした大きな流れは完全には理解されていないと言える。
食品・飲料メーカーとタバコ企業の共通点とは?
食品・飲料業界とタバコ業界には以下のような共通点がある。
自主規制能力: タバコと食品・飲料業界はどちらも業界からの働きかけが強く、自主規制に依存してきた。しかし、近年米国食品医薬品局(FDA)が栄養成分表示について、糖類の量および1日の摂取比率を示すよう義務付けたなど、タバコ同様に、政府による規制が業界へ影響力を持つようになってきている。
医療費増大への対応: 近年、生活習慣病は医療費が膨らむ要因の一つになっている。増え続ける医療費を抑える狙いとして、欧米では政府が生活習慣病の引き金となっている砂糖についても、相次いで課税する動きが広がっている。また今後、タバコ同様に訴訟の可能性が考えられる。
中毒性のある成分: タバコと異なり、砂糖の中毒性は今のところまだ法廷で認められたわけではないが、科学的根拠が提示されれば、訴訟リスクが高まる可能性がある。
つまり、食品・飲料業界は、1980年代のタバコ業界と置かれている状況が似ており、今後、売上減少や大規模訴訟に追い込まれる恐れがある。今後のこうしたリスクを見通す上で、以下3点が鍵となってくるだろう。
1. 医療機関や保健機関からの懸念や消費者意識の高まり
2. 人口動態、医療費の増加
3. 砂糖とメタボリックシンドロームの因果関係の新しい科学的根拠の提示
今後のポイントは砂糖とメタボリックシンドロームとの因果関係に科学的根拠が示されるかどうか
1点目と2点目については世界ではすでに現実のものとなっている。世界保健機関(WHO)が1日の糖類摂取量に関する指針を発表したことに加えて、健康に対する消費者の意識が高まった結果、炭酸飲料の需要が減少した。
生活習慣病による医療費の増加が財政の大きな重荷になっていることに、各国政府も危機感を募らせている。過剰な糖分に対する課税は、食生活の改善を促すとともに、税収にもつながる。フランスやメキシコ、米国の一部、英国が相次いで砂糖税を導入した背景には健康リスクを低減したいという狙いがある。
3点目についてはこれからではあるが、将来、砂糖とメタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群)の因果関係が科学的に証明された場合、同じような製品が世界中で販売されているため、タバコ業界の時よりも速いペースで波紋が広がると考えられる。
生活必需品業界は、健康リスクへの懸念や消費者意識の高まりなどを背景に、今後数年間で規制圧力が強まると考える。アクティブ投資家として、シュローダーはこうしたリスクを企業調査や投資判断に取り込んでいく必要があると考えている。また、今後とも食品・飲料メーカーに対して積極的なエンゲージメントを行うことで、投資家の選好や市場のトレンド、食品・飲料業界がいま直面しているリスクなどを共有していくつもりだ。
出所:シュローダー
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