地域ごとに異なる年金に対する不安度

老後資金に対する投資家の不安度が最も高い国は?

2019年12月10日
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著者

デイビッド・ブレット
インベストメント・ライター

老後資金の不足問題が拡大していると多くの専門家が警鐘を鳴らしている。世界経済フォーラムが行ったある調査では、2015年には70兆ドルだった世界の主な年金大国の年金不足額が、2050年までに400兆ドルに達すると試算されている。

では、個人レベルではどうだろうか。投資家たちが自分の老後資金についてどう思っているのかを明らかにすべく、世界各国の2万5,000人超の投資家を対象に、「一生涯足りる十分な老後資金を蓄えていますか?」という質問を投げかけた。

その結果、全体的な傾向だけでなく、各国の投資家が自分の老後計画についてどのように考えているのかを垣間見ることができた。

「シュローダー・グローバル投資家意識調査2019年」の結果、世界全体の現役世代の投資家の約4分の1(24%)が、老後のために十分な資金を貯蓄できていないと感じていることが判明した。

彼らは収入の平均15.3%を貯蓄に回しているにもかかわらず、それが十分でないと感じている。

サンギータ・チャウラ(シュローダーのリタイアメント・セービングス・ヘッド)のコメント:「老後のために十分な資金を貯蓄に回しているかどうか自信がないと多くの人が感じていることは、驚きではありません。」

「彼らがそう感じるのは当然です。なぜなら、老後資金を貯蓄する際の意思決定には、多くの前提や不確定要素が伴うからです。」

「例えば、何歳で退職するのか、資金を投資し続けるのか、それとも収入を生み出す商品の購入に充てるのか、といった判断です。また、他の収入源や不動産等の財産も影響します。」

「必要な資金を正確に計算するには、何歳まで生きるのかを確定する必要がありますが、もちろんそんなことは誰にも分かりません。」

老後資金に対する不安度ランキング

世界全体でみると、老後資金に対する不安度は調査を行った32の地域によって異なることが分かった。最も不安度の高い日本では現役世代の半数以上(53%)が老後資金を不安視しており、韓国、ロシアおよび香港の投資家も老後資金に対して大きな不安を抱いていることが分かる。

上位10位の内の4カ国が欧州諸国であり、ポーランド(7位)、フランス(8位)およびオランダ(10位)等が10位圏内に入っている。

インド、インドネシアおよびブラジルの投資家は、老後資金に対する不安度が最も低い。地域別に見ると、アジアの投資家は欧州の投資家よりも老後資金を不安視していることが分かる。また、インドやインドネシア等の例外を除けば、北米・中南米の投資家の不安度が最も低くなっている。

前出のチャウラは次のように述べている。「地域によって不安度が異なる背景には様々な理由があります。公的年金の充実度、投資家の一般的な見解、必要な老後資金を正しく理解していないことなどが理由として挙げられます。」

「例えば日本や韓国をはじめとする成熟市場では、過去数十年のリターンが芳しくありません。一方インドや中国は空前の成長を遂げています。こうした状況が将来的なリターンに対する信頼と期待水準に影響している可能性があります。」

 

出所:シュローダー *対象者が少数(n<30)であることに留意
※「十分な老後資金を積み立てている/すでに蓄えたという安心感はどの程度ありますか?」という質問に対する回答をランキングとして図示。

退職世代の投資家に対しては、老後資金が一生涯持つかどうかについても質問した。その結果、不安を抱いている退職世代は20%にとどまり、不安を抱いている現役世代が24%であるのに比べ、全体的に退職世代のほうが楽観的であることが分かった。

その一方で、退職世代の不安度が現役世代よりも著しく高い国も一部あった。

退職世代の不安度が現役世代よりも高く、その乖離幅が大きかったのはロシア、ポーランド、ポルトガル、韓国とブラジルとなった。乖離幅が最も大きかったロシアでは、老後資金を不安視する現役世代の投資家が41%であったのに対し、退職世代は58%に上った。

これとは反対に、現役世代の不安度が退職世代を上回った国もあった。

例えば、オランダ、オーストリア、カナダ、デンマーク、中国およびアラブ首長国連邦では、退職世代の投資家は現役世代よりも老後資金に対してはるかに高い安心感を抱いていることが分かった。

オーストリアでは、全体の22%が老後資金に不安を抱いていると回答したが、不安を示した退職世代はわずか4%にとどまった。

チャウラは次のように述べている。「もし不安がある場合には、中立的なファイナンシャルアドバイザーやファイナンシャルプランナーに助言を求めるべきです。老後資金の貯蓄に関する意思決定には様々な要素が影響するため、その判断は簡単ではありません。専門家のアドバイスを受けることで、自分の判断に自信を持つことができます。」

 

シュローダーは、世界32地域の投資家2万5,743人を対象とする独立したオンライン調査の実施をResearch Plus社に委託し、2019年4月4日~5月7日に実地調査が行われた。この調査では「投資家」を、1万ユーロ(または相当額)以上を今後1年間に投資する予定があり、かつ過去10年間に投資商品の取り引きがある投資家と定義している。



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