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「D」が導く新時代:脱炭素化(Decarbonisation)

脱炭素化(Decarbonisation)は、インフレ率上昇を特徴とする新時代への転換を促す鍵である3つの「D」のうちの一つです。その背景をご説明します。

2023年11月30日
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著者

Simon Keane
インベストメント・スペシャリスト

気候変動への取り組みは加速しています。特に、発電における脱炭素化や、化石燃料を利用した暖房・輸送システムから、再生可能エネルギーを使った電力を利用するシステムへの移行が進んでいます。

このエネルギー転換は、地球温暖化を抑えるため、2050年までに二酸化炭素(CO2)などの温室効果ガス(GHG)排出量をネットゼロにするという野心的な目標を達成するために必要な条件です。

しかし、石油・天然ガス・石炭から脱却し、再生可能エネルギーを中心とした経済構造へ移行するには、コストがかかります。最も楽観的なシナリオでも、この変化は今後10年のインフレ圧力に拍車をかけると予想されます。

炭素価格の上昇は生産を抑制し、全体の生産高を低下させるため、生産性悪化につながるでしょう。そのため、気候変動への取り組みは、成長鈍化とインフレ加速の両面をもつ、スタグフレーションを誘発することが予想されます。

脱炭素化に向けた「アメとムチ」の政策

カーボンプライシングは、CO2排出企業に明確な経済的影響を及ぼすため、気候問題の解決に必要な主要な政策手段として広く認識されています。炭素排出に価格が付けられることで、企業は活動を転換して排出量を削減するか、排出を続けて追加コストを負担するかの選択を迫られます。

欧州は、EU排出量取引制度や炭素国境調整メカニズムなどの制度を通じて、カーボンプライシングを主導してきました。カーボンプライシングによって、化石燃料エネルギーの需要抑制、エネルギー効率向上、再生可能エネルギーや低炭素技術への投資促進などが期待されています。

カーボンプライシングは、気候変動対策のうち「ムチ」の代表例です。

「アメ」の政策は、グリーン補助金を通じたイノベーションの促進です。米国で採用されており、政府の資金援助やインフレ削減法などを通じて、再生可能エネルギーの供給を増やすことを目指すものです。

環境エコノミストのアイリーン・ラウロは次のように述べています。

「テクノロジーとイノベーションへの投資は、ネットゼロ目標を達成するための重要な要素です。ネットゼロへの移行には、カーボンプライシングやより厳しい気候関連規制だけでなく、今後10年間のグリーンテクノロジーへの投資拡大が必要です。」

移行初期における化石燃料がもたらすインフレ

技術革新の歴史は多くの希望を与えてくれます。中でも、グリーンテクノロジーは多くの可能性を秘めています。新たな投資の恩恵が生まれると、さらなるイノベーションによって生産性が向上し、炭素価格上昇によるインフレの影響の一部を相殺するでしょう。

しかし、現在はまだ化石燃料への依存度が高いため、厳格にカーボンプライシングを導入すると、少なくとも今後10年はインフレをもたらすと考えられます。特にエネルギー・電力価格に影響するため、エネルギー転換の初期段階では、化石燃料がもたらすインフレを避けるのは難しいでしょう。

脱炭素化に関連したインフレをもたらすもう一つの要素として、グリーンフレーションが挙げられます。これは、エネルギー転換に必要な鉱物や金属が不足することによる影響です。

脱炭素化が世界経済にもたらすスタグフレーションの影響を避けることは困難ですが、新たな投資とイノベーションを繰り返すことで、長期的にはより大きなイノベーションがもたらされるでしょう。

用語の説明は、「「D」が導く新時代:経済用語集」のページをご覧ください。

著者

Simon Keane
インベストメント・スペシャリスト

Topics

「D」が導く新時代
マクロ経済
市場見通し
インフレ
脱炭素化
エネルギー革命
フォシルフレーション
グリーンフレーション
レジーム・シフト