シュローダー・サステナブル・ブリッジ【第1回】

【第1回】対談 人口減少社会における成長のカギ「人財躍動化」

Adecco Group Japan 代表 川崎健一郎氏 × シュローダー 日本拠点代表 黒瀬憲昭


「『人財躍動化』を通じて、社会を変える。」をビジョンとして掲げるAdecco Group Japanの川崎健一郎氏と、弊社代表取締役社長の黒瀬憲昭が「サステナブルな社会をつくる働き方と企業のあり方」について対談しました。

  1:20~ Adecco Group、シュローダーについて   
  2:55~ コロナ禍で企業や人々の意識はどう変わったか?
  7:50~ 「人財躍動化」とは?
10:51~ 資産運用会社として人財をどうとらえるか
12:10~ 「いきいきと働く」と生産性の関係
16:09~ 資産運用会社のESGの視点
17:50~ サステナブルな社会における成長戦略      

※2022年3月、感染対策に留意し撮影を行いました。

コロナ禍で変わる、選ばれる企業の条件

黒瀬 新型コロナの流行で、これまでの常識が一変しましたね。私たちの働き方についても、大きな変化を強いられています。アデコグループは、人財サービスのグローバル企業として様々な業種の企業とそこで働く人々に関わっていますが、コロナ禍で企業や人々の意識はどう変わったと感じていますか。

 

川崎氏 コロナは人々の考え方や価値観を大きく変えたと思っています。どう生きていくべきか、そのためにはどう働くべきかといった根本的な部分に変化が生じ、生活スタイルそのものが変わった人もいるでしょう。

一方、企業の取り組みとして、特に日本では、リモートワークを中心にデジタル化が一気に進みました。これらの変化はアフターコロナになっても戻ることはないと思います。

シュローダーはいかがですか。

黒瀬 ロンドン本社が2018年に新社屋に移転してからフリーアドレス制を導入していまして、すでにフレキシビリティがありました。おかげで日本でも、かなり早い段階からリモートワークを進めることができました。


川崎氏 当社も2017年から未来の働き方を模索しており、社員の総労働時間の50%をリモートワークにすることを目指してきました。2019年末時点でおよそ30%を達成していましたが、その直後に感染が拡大し、コロナ禍でのリモートワーク率は90%を優に超えています。現在は少し感染拡大が収まってきましたが、依然として70%前後でリモートワークが行われています。アンケート調査をしてみると、生産性は落ちていませんし「これからも続けていきたい」との声が多数集まっていますから、今後は当グループの標準モデルになっていくでしょう。

また当社の人財サービス事業でいうと、これまでお客様からご依頼をいただく際に、「通勤時間1時間前後で通える人財」を望む声が多く、対象者が限られていました。しかし、フルリモートワークであれば勤務地の制限がなくなります。全国どこからでも最適な人財をご紹介するということが可能になっています。

黒瀬 ロケーションフリーが進んでいるのですね。

川崎氏 そうですね。業界によりますが、例えばIT業界などデジタル人財は全国どこからでも働ける状態になっています。今は人財不足ですから、より優れた人財を集めたい企業は、柔軟な働き方が欠かせなくなっています。

「生き生きと、幸せを感じながら働く」が生産性を高める

黒瀬 御社のビジョンにある「人財躍動化」について、具体的に教えてもらえますか。

川崎氏 このビジョンは2021年からの5カ年中期事業計画の中で掲げているものです。日本では人口減少が進んでいます。その中でいかにサステナブルな社会をつくっていくかが大事です。また日本の労働生産性は諸外国と比べて低い状態です。デジタルトランスフォーメーション(DX)など新しいテクノロジーの活用で労働生産性は高まると思いますが、新しいテクノロジーをつくるのは人であり、活用するのも人です。当社は人財サービス企業として「人が持っているポテンシャルを最大化」することも大事だと考えています。ポテンシャルが最大化され、労働生産性が高い状態というのは、生き生きと幸せを感じながら、躍動的に働いている人がたくさんいる状態だと思います。実は、幸せを感じながら働いている人は創造性が3倍になり、生産性が30%以上高まると言われています。そこで掲げたのが「人財躍動化」です。

シュローダーは資産運用会社としてESGにフォーカスされていますが、運用会社として人財をどうとらえていますか。

黒瀬 当社は機関投資家や個人からお預かりした資金を、株式や債券などに投資しています。その際に投資先企業を選別することになりますが、早くからESGの視点を取り入れています。具体的には1998年にESGの専任担当者をおいてから、すでに20年以上が経過しました。最近、ESGの「E(環境)」への対応は当たり前となり、「S(社会)」の部分に注目が集まっています。これはまさしく人的資本に関わります。社員の働く環境を改善し、モチベーションを高めていく仕組みがあるかは、企業評価において重要なポイントの一つです。優秀な社員確保や生産性の向上は、企業の成長につながるからです。

SDGsへの取り組みで適材と適所を生み出す

黒瀬 次に、サステナブル社会における企業の成長戦略についてお聞きしたいと思います。今後どのような成長戦略を描いていますか。


川崎氏 当社では2025年に向けた中期事業計画でSDGsへの貢献を経営の根幹に据えています。収益を出すことと、社会的な課題を解決していくことは別のものではなく、一体であるべきだと捉えているのです。その中でもSDGsの17の目標のうち、できるところから着目し、日々のオペレーションの中で少しでも貢献していこうと考えています。具体的には、4番「質の高い教育をみんなに」、8番「働きがいも経済成長も」、9番「産業と技術革新の基盤をつくろう」の3つを中心に取り組んでいます。

さきほどの人財躍動化には、一人ひとりが生きる目的や人生の価値観である「ライフビジョン」と、それを実現する手段として「キャリアビジョン」を設計し、それらと企業(組織)のビジョンがマッチすることが理想だと思っています。ですから、まずは一人ひとりにライフビジョン、キャリアビジョンを探求してもらい、それを実現するために新たな専門スキルを身につける教育プログラムなどを2025年までに30万人に対してアデコグループジャパンとして提供していきます。

企業に関しては、ビジョンがまだ設計しきれていないケースもあると思います。そうした組織にはコンサルテーションなどを実施して、適所を生み出していきます。これらによって適財と適所が生み出されていく、そんな状態をつくるための支援をしていきたいと考えています。

成長戦略としてのM&A、企業カルチャーも重視

黒瀬 素晴らしいですね。人財に関するサービスを拡充するために積極的にM&Aも進めているそうですね。

川崎氏 M&Aは、事業を成長させていくうえで非常に重要な事業戦略のひとつと考えています。その際に大切にしているのは、互いのビジョンやカルチャー、これが合うか合わないかです。たとえ事業領域が近くても、目指している姿や大切にしている価値観、カルチャーが違いすぎる場合はうまくいきません。

黒瀬 同感です。私は「歴史はイノベーションの連続である」と考えています。当グループは創業時マーチャントバンクでしたが、2000年にその部門を売却、今は資産運用業に特化しています。なかでもアクティブ運用を手掛けているわけですが、パッシブ運用が広がりを見せる中、どう生き残っていくかが重要です。特にここ約10年はM&Aによって新しい運用ケイパビリティを増やしてきました。グループとして気を付けているポイントは、自分たちのカルチャーを壊すような買収を手掛けないことです。こうしたM&Aなども含む変化を伴う成長、つまりイノベーションを続けることで、歴史は作られていくと考えています。

今年は聖徳太子が亡くなって1400年の節目の年です。聖徳太子は十七条の憲法を掲げましたが、その第一条は「和を以て貴しとなす」です。プロジェクトが成功したらみんなで喜びを分かち合う。それによって、また新たな活力が出てくる。そういったエネルギーを引き出すのが「和」です。「和」によって人財の力を引き出して、より大きく成長する企業をつくっていきたいと考えています。

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