日本版スチュワードシップ・コードについて
日本版スチュワードシップ・コードの実施方針
2021 年 9 月
2020年3月24日、金融庁の有識者検討会である「スチュワードシップ・コードに関する有識者検討会」より、「責任ある機関投資家」の諸原則≪日本版スチュワードシップ・コード≫(以下、日本版スチュワードシップ・コード)の再改訂版が公表されました。
シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社は、この改訂版日本版スチュワードシップ・コードに対応し、スチュワードシップ責任を果たすための方針を、以下の通り公表します。
原則1.機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たすための明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
シュローダーはお客様の運用目的に沿った資産運用によってリターンを生み出すことを目指し、運用業務を行っています。運用プロセスの中心は、投資先企業が価値を生み出し、その価値を維持できるかどうか、を検討することです。従って、投資先企業に対し、企業価値に影響を与え得ると考えられる事項について疑問をぶつけることは、極めて重要なことであると考えています。投資先企業との対話と積極的な議決権の行使は、我々の株式投資における運用プロセスの一環と捉えています。
シュローダーでは長期にわたり持続可能な企業価値に影響を与える問題に関して、投資先企業との対話を行い議決権を行使します。ここでいう問題とは、以下のようなものを指しますが、必ずしもこれらに限定されるものではありません。
事業戦略、企業業績、財務資本戦略、経営管理、事業買収・売却、業務運営、内部管理、リスク管理、取締役会や委員会など統治組織のメンバーやその構成、企業の持続可能性、ガバナンス、報酬体系、環境責任・社会的責任。
エンゲージメント活動で使用される社内のリソースは、それぞれのケースにおける潜在的な影響度や状況に応じ管理されます。
保有比率の低い投資先の場合、最小限の株式を保有する株主が重大な影響をもつと考えられない限り、エンゲージメント活動に使用されるリソースは比較的少ないものにとどまります。
シュローダーの関与は、我々が投資先企業をよりよく理解することと同時に、その企業に我々の関心がどこにあるのかを理解してもらうことから始まります。我々が投資先企業の変化にどの程度期待するかは、個別のケースによって異なります。我々が焦点を置くのは、投資先企業の株式価値に大きな影響を与える問題についてです。
原則2.機関投資家は、スチュワードシップ責任を果たす上で管理すべき利益相反について、明確な方針を策定し、これを公表すべきである。
シュローダー・グループの利益相反に関するポリシーは、グループのESGポリシー及び当社の利益相反管理方針に規定されています。我々は常に顧客の利益のために議決権を行使し、行動します。当社では、当社と顧客との間に利益相反が発生する場合は、原則として、議決権行使助言機関からの推奨に従い、議決権行使を行うこととしています。利益相反が生じうる具体的事例としては、シュローダーの主要顧客に対する議決権行使などが想定されます。
当社における議決権行使は、ファンドマネジャー・アナリストという運用者のみで構成され経営陣から独立したスチュワードシップ委員会で決定されます。経営の観点とは独立してスチュワードシップ責任を果たすための判断ができるよう、取締役会及び経営会議はスチュワードシップ委員会の判断について全面的な権限委託を行っています。
原則3.機関投資家は、投資先企業の持続的成長に向けてスチュワードシップ責任を適切に果たすため、当該企業の状況を的確に把握すべきである。
通常、投資先企業の状況の把握は、決算発表時や株主総会のタイミング、また、報道や会社発表が行われた際、さらに我々の投資アイデアに対するリサーチを実施する場合や保有比率を見直す場合に行います。
モニタリングの程度や頻度は、それがどのような投資先であるかにより異なります。例えば、保有割合が低位の企業よりも、高位の企業に対する状況の把握は、頻度がより高く、より詳細なものとなります。我々は、伝統的な財務分析に加え、企業が環境、社会、ガバナンス(ESG)に関するリスクにどの程度さらされているか、また、それをどのように管理しているか、を分析することは、適正な企業価値の理解、長期的に持続可能な利益を創出する能力の見極めという観点で非常に有益だと考えています。
原則4.機関投資家は、投資先企業との建設的な「目的を持った対話」を通じて、投資先企業と認識の共有を図るとともに、問題の改善に努めるべきである。
「目的を持った対話」は、通常は主として投資先企業の経営層とのミーティングを通じて行われます。その他、社外取締役へのコンタクトや議決権の行使がスチュワードシップ活動の一環として活用される場合もあります。対話の実践にあたっては、特定の問題についてミーティングを持つこともあれば、定期的に行われるミーティングの一環として行うこともあります。当社では、中長期的な株主価値向上の観点から課題を有すると判断される投資先企業のリスト(フォーカスリスト)を作成し、その課題解決に向けたエンゲージメントを投資先企業のマネジメントと行います。その進捗に関しては、当社グループ本拠のロンドンESGチームとも共有されています。
集団的エンゲージメントについては、当社単独でのエンゲージメントと比較し、その効果が十分に期待できる場合について、その利用を検討します。
エンゲージメント活動において、インサイダー情報に接しないよう留意しておりますが、インサイダー情報に接した場合には社内の規定に従い、厳格に管理を行います。
原則5.機関投資家は、議決権の行使と行使結果の公表について明確な方針を持つとともに、議決権行使の方針については、単に形式的な判断基準にとどまるのではなく、投資先企業の持続的成長に資するものとなるよう工夫すべきである。
当社は、投資家から委託された資金の運用に際して投資先企業に対し議決権を行使することについて、直接的・間接的に、その必要性を認識しています。すなわち、直接的には、適切な企業統治行動をとることが投資家の投資利益に貢献し、また、間接的には、企業活動の適正な評価と監視行動を通じて資本市場の機能を高め、投資家の投資利益に貢献するものと考えます。この認識に基づき、投資家に対する受託者責任を果たすため、株主価値の長期的な最大化を目的基準として社内規程を定め、議決権の適正な行使指図を行います。
日本株式の議決権行使に係る基本原則及びガイドラインはウェブサイト上で公表しています。
また、当社は、投資先企業との建設的な対話を推進する観点から株主総会における議決権行使結果について、個別の投資先企業かつ個別議案ごとに公表致します。また、その際、会社提案に反対した場合、及び株主提案に賛成した場合はそれらの理由についても記載いたします。
原則6.機関投資家は、議決権の行使も含め、スチュワードシップ責任をどのように果たしているのかについて、原則として、顧客・受益者に対して定期的に報告を行うべきである。
当社はスチュワードシップ・コードの各原則に係る実施方針を適宜見直し、公表します。
スチュワードシップ活動の記録はスチュワードシップ委員会が管理し、顧客より開示要請がある場合には、議決権行使、具体的なエンゲージメントの状況を顧客ごとに開示しております。
当社では、議決権の個別開示に加え、どのようにスチュワードシップ活動に取り組んでいるかをウェブサイト上で公表しています 。
原則7.機関投資家は、投資先企業の持続的成長に資するよう、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解のほか運用戦略に応じたサステナビリティの考慮に基づき、当該企業との対話やスチュワードシップ活動に伴う判断を適切に行うための実力を備えるべきである。
当社では、スチュワードシップ活動を適切に行うため、当方針及び議決権行使ガイドラインの見直しを適宜行うとともに、投資先企業との対話の取組みについてはESGに関する課題解決を通じ長期的な株主価値の向上に寄与することを目的としてその質的向上に努めてまいります。
弊社のスチュワードシップ委員会が主導して行うエンゲージメントなどの活動内容については、定期的に経営委員会に報告され、活動の推進をサポートする体制が整えられています。
当社は、専門知識やスキル向上に組織としてコミットしており、その内容を「お客様本位の業務運営に関する方針」にて公表しています。また、当社におけるスチュワードシップ活動に関する実施状況の自己評価を適宜行い、投資先企業の持続的成長に資するスチュワードシップ活動を展開してまいります 。
原則8.機関投資家向けサービス提供者は、機関投資家がスチュワードシップ責任を果たすに当たり、適切にサービスを提供し、インベストメント・チェーン全体の機能向上に資するものとなるよう努めるべきである。
当社では、議決権行使に当たって、議決権行使助言会社からの助言を参考情報として利用しています。助言会社の助言ポリシーの見直しの内容や個別議案における判断根拠などに関して、適宜助言会社と議論を行い、株主利益に資する適切な議決権行使に努めてまいります。
以上
当実施方針は、シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社が運用する資産に対して適用されます。他のグループ会社も日本株への投資を行い、日本企業とのエンゲージメントを行う場合があり、その場合の実施方針については、をご覧ください。
シュローダーグループの実施方針は長期的株主価値の増大を目指すという目標を共有しており、シュローダー・インベスト・マネジメント株式会社と他のグループ会社は投資先企業においてこの目的を果たすため共同して活動してまいります。
日本版スチュワードシップコードに係わる取組み内容
2024年9月
日本版スチュワードシップ・コードに係る取り組み
シュローダー・グループ(以下「シュローダー」といいます。)では、英国系資産運用会社として英国のスチュワードシップ責任に取り組んできた経験と体制をもとに、日本法人であるシュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社においても日本版スチュワードシップ・コードの受け入れを表明し、運用部内に設置された スチュワードシップ委員会を中心にスチュワード活動を運用プロセスの一環として位置づけ積極的な取り組みを行っています。
日本版スチュワードシップ・コードのもと、弊社では、投資先企業やその事業環境等に関する深い理解に基づく「建設的な対話」(エンゲージメント)、積極的な議決権行使などを通じて、当該企業の企業価値の向上や持続的成長を促すことにより、投資リターンの拡大を図る責任を有すると考えています。
エンゲージメントの具体事例
投資先企業との対話において、資本政策や株主還元の在り方は主要なテーマの一つです。このテーマに関してこれまで継続してミーティングを行っている投資先企業の事例では、多額の投資有価証券の保有などバランスシートに非効率性が認められ、資本効率を高める余地が大きいとの弊社の見方をレターに纏め、取締役会宛てに出状しました。日本企業においては、非効率なバランスシートの改善が必要と思われるケースは依然として多く存在しており、エンゲージメントを通じて「資本の効率性をいかに確保するか」というマーケットの関心事に対し、マネジメントが明確な回答を示すよう取り組みを強化していきたいと考えています。
また、EやSのテーマについても、エンゲージメントを行っています。CO2排出量削減に関するターゲットの妥当性やそのための具体的施策などの議論に加え、”S”のステークホルダーの中では特に従業員視点でのエンゲージメントを重視しています。人的資源の適切なマネジメントは企業の生産性に直結することから、従業員教育に関する開示の拡充や従業員サーベイの結果の継続的な開示などについて投資先企業と議論を行っています。企業がEやS視点でのテーマに関するコミットメントを示す手段として、関連するKPIを役員報酬に組み込む手法は有効と考えており、その導入に向けて議論を行っています。
このようなエンゲージメントには数年単位の時間を要し、マネジメントと一定の時間を共有する姿勢が大切です。長期投資を志向する投資家として、今後とも長期視点でのエンゲージメントに取り組んでまいります。
2023年度 スチュワードシップ活動の自己評価
1.スチュワードシップ活動の透明性確保
議決権行使結果につきましては、2017年4-6月開催の株主総会議案より個別の投資先企業かつ個別議案ごとの開示をスタートしました。2023年4-6月開催の株主総会議案に対する議決権行使結果は2023年8月に、2023年7月-2024年3月開催の株主総会議案に対する議決権行使結果は2024年5月に、弊社ホームページにて開示いたしました。
議決権行使結果の開示にあたっては、投資先企業との建設的な対話に資するという考え方のもと、会社提案に反対した場合、及び株主提案に賛成した場合の理由についても合わせて記載しました。
エンゲージメント活動については、基本的な考え方や実施のプロセスを実施方針に記載しており、その具体的内容については「エンゲージメントの具体事例」として弊社ホームページにて開示を行っております。今後ともエンゲージメントが企業価値の向上に繋がった事例など積極的な開示に努めたいと考えています。
2.利益相反の適切な管理
- 利益相反に関するポリシーとして、グループの「ESGポリシー」及び弊社の「利益相反管理方針」の開示を行っています。議決権行使に際して利益相反が生じうる場合には原則として議決権行使助言機関からの推奨に従い、議決権行使を行うこととしています。2023年度においては、該当する事例はありませんでした。
3.実効性あるエンゲージメント活動
- 弊社では、中長期的な株主価値向上の観点から課題を有すると判断される投資先企業のリスト(フォーカスリスト)を作成し、その課題解決に向けたエンゲージメントを行っています。経営陣との対話に加え、取締役会宛のレター作成や社外取締役との個別ミーティング実施など、対話における深化の度合いに応じて最も効果的な手段を選択し、エンゲージメント活動を実践しました。
他の投資家との意見交換などは行いましたが、所謂「集団的エンゲージメント」は行っていません。弊社単独のエンゲージメントと比較し、その効果が十分に期待できる場合については、その利用を検討します。
4.質的向上に向けた取り組み
- ESGに対する関心の高まりから、ESGに関する開示の在り方や統合報告書の内容について多くの企業からミーティング依頼を受け、議論を行いました。また、議決権行使やESGの投資への活用について、外部セミナーにパネリスト参加し情報発信を行うなど、株式投資におけるESGインテグレーションへの理解を促す活動にも努めました。
ESGの中では、気候変動関連の株主提案が増加する等、今後さらにEやSの分野に注目が集まるものと見ています。気候変動リスクに関しては、中期ターゲットや具体的なロードマップの策定、また、人的資源の観点では従業員満足度(S)などのKPIを役員報酬スキームに導入するような取り組みが望ましいと考え、企業との議論を行いました。企業の開示内容と投資家の知りたい内容との間にかい離が生じているケースもあり、そのギャップを埋めるための取り組みを今後とも継続してまいります。
弊社では、グループとしてのESGの取り組みに加え、日本株式運用におけるESGアプローチについてホームページ上での開示の拡充を図っておりますが、今後とも積極的な情報発信に努めてまいります。