市場環境
12月は、欧米における景気後退懸念に加えて、日銀の金融政策決定会合でイールドカーブ・コントロールが修正され、金利の上昇から日本株は下落しました。為替は円高が進行し、輸出関連を中心に売られました。結局、TOPIX(配当込み)では‐4.6%と大幅な下落となりました。年度初来では、-1.3%の下落となりました。
出所:Bloomberg
主要戦略運用パフォーマンス
市場動向としては、下落相場にあって国内金利上昇を受けて銀行株が大幅上昇し、保険も強く、電気・ガス、鉄鋼、小売なども堅調でした。一方で、景気敏感業種を中心に不動産、精密機器、輸送用機器、電気機器、機械などが大幅下落しました。スタイルでは銀行を中心にバリュー株が強く、グロース株は大きく売られました。サイズでは大型主導での下落となり、小型が相対的に優位でした。
弊社の主要戦略のパフォーマンスはスタイルの影響を大きく受け、オポチュニティ、イールドが大きくアウトパフォームし、サステナブルも良好、コアは堅調な結果でした。一方で、グロース株下落の影響が大きくなった小型、マイクロ、グロースは大きくアンダーパフォームしました。
出所:Bloomberg、シュローダー、各戦略コンポジット(運用報酬控除前)、超過収益は対ベンチマーク、TOPIX配当込及びRussell/Nomura Small Capインデックス、Micro Capインデックス
運用者の視点『日本の高配当株投資に魅力あり』
三浦 隆史
日本株式ファンドマネジャー
本コラムでは、日本株式運用チームのファンドマネジャー、アナリストが毎月入れ替わりで市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します
残念ながら、グローバル投資家の日本株への関心は現在あまり高くありません。2012年以降の海外投資家から日本株への資金フローを見ると、アベノミクスが始まった2012年から2015年にかけて大規模な資金流入が起きましたが、2015年後半からは資金流出が続いています。アベノミクス以降の累計資金フローはすでにマイナスに転じており、海外投資家の日本株に対するポジションは非常に軽い状況です。しかし、アベノミクスが始まってから10年が経過し、海外投資家から日本株への関心が高まりつつあると感じています。
日本株のバリュエーションは米国などの諸外国と比べて割安感が大きいですが、日本株の割安さは日本企業の低いROEに起因しており、割安だから日本株を買おうという機運はほとんど起こったことがありません。しかしここ数年は、政策保有株式の削減や余剰キャッシュの活用、事業ポートフォリオの見直しといった資本収益性の改善に向けた取り組みが活発化してきています。2021年からは議決権行使助言会社が政策保有株式を過度に保有する企業の経営陣への反対票を推奨するようになり、株式持ち合いの解消を後押ししています。政策保有株式の削減をきっかけに企業の余剰キャッシュが株主還元や人材・成長投資に向かえば、日本企業のROE向上につながると期待しています。
ROEが改善に向かえば、日本株に対する海外投資家からの関心が高まり、株価バリュエーションの上昇につながります。そして、海外投資家が日本株投資を検討する際に注目されるのが、配当利回りが高い高配当株だと考えています。日本経済がすでに成熟していることもあり、日本企業の利益成長率は海外企業よりも見劣りします。加えて、日本企業の利益は為替や景気から影響を受けやすく、ボラティリティも非常に高いです。しかし、日本企業は豊富な余剰キャッシュを抱えていることもあり、配当の安定性と成長性は海外企業よりも高い水準となっています。TOPIX採用企業の利益と配当の軌跡を見ても、配当金は過去20年に渡って年率8%程度で安定成長してきた実績もあります。
また、配当の観点から見た日本株は割安感も大きいです。配当利回りと長期国債の利回りの差分であるイールド・スプレッドをグローバルで比較すると、配当の安定性・成長性があるにもかかわらず、日本株のイールド・スプレッドは諸外国よりも魅力的な水準となっています。
2020年には、米国の著名投資家が円建て社債で調達した資金を日本の総合商社に投資したことが話題になりました。総合商社は高配当株の代表例です。日本企業による余剰キャッシュの活用機運が高まれば、海外投資家による日本の高配当株への投資が活発化してくるだろうと考えています。
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