市場環境
1月は、米国においてインフレ減速を示す経済指標の発表を受けて利上げペース鈍化の期待から、堅調な動きとなり、加えて中国における「ゼロコロナ政策」の撤廃も上昇相場を後押ししました。結局、TOPIX(配当込み)では4.4%と大幅な上昇となりました。年度初来では、3.1%の上昇となりました。
出所:Bloomberg
主要戦略運用パフォーマンス
市場動向としては、前月からのリバーサルが強く、業種では鉄鋼の他、電気機器、機械などの外需、景気敏感業種が大きく反転上昇しました。一方で、医薬品や陸運、小売、不動産などが軟調で、保険も反落しました。スタイルではグロース優位となり、サイズでは大型主導での上昇となり、小型が相対的に弱くなりました。
弊社の主要戦略のパフォーマンスはスタイルの影響を受けつつも、個別銘柄の寄与も大きくなり、概ね良好な結果となりました。コア、サステナブル、小型、マイクロがアウトパフォームし、グロースとオポチュニティはほぼベンチマーク並み、イールドはリバーサルの影響でアンダーパフォームとなりました。
出所:Bloomberg、シュローダー、各戦略コンポジット(運用報酬控除前)、超過収益は対ベンチマーク、TOPIX配当込及びRussell/Nomura Small Capインデックス、Micro Capインデックス
運用者の視点『150年前の選択と実行のスピード感、現在になぞらえるならば』
森 弘美
日本株式セクターアナリスト
本コラムでは、日本株式運用チームのファンドマネジャー、アナリストが毎月入れ替わりで市場や業界での注目点、気になった話題などをご紹介します。
昨年は日本の鉄道開業150周年だったのをご記憶の方も多いかと思います。明治初期、鉄道建設資金調達を目的とした本邦初の国債発行を弊社グループが引き受けたご縁から、世上盛り上がった一連の記念企画を大変興味深く拝見しておりました。とりわけ私の関心を惹いたのは、NHKの歴史番組「英雄たちの選択~汽笛一声!文明開化を決めた資金調達~」の視点でした。資金調達、設備投資、そして実行のスピード感が、その後の明治国家の発展を決定づけたと言われています。この点、私が株式アナリストとして調査する対象企業の業績・価値への示唆に富んでいると考えています。
同番組内で「大隈重信と、英国留学経験のある伊藤博文は、日本の近代化には鉄道建設が不可欠と考えた。一方で『経済より軍事面を優先すべき』との立場を採る西郷隆盛と大久保利通は反対。世論も大反対でのスタートだった」との解説がありました。そのため、建設許可は下りたものの国家予算はゼロでのスタートしています。当初は米国政府からの出資申し出を検討したのですが、鉄道経営権も要求されたため、植民地化を危惧した大隈と伊藤は即座に断りました。その後、大隈と伊藤は英国公使に相談し、最終的には鉄道経営権を求められない形で決着しました。そして、1870年(明治3年)に鉄道建設資金調達の為の国債発行を弊社グループが引き受けました。
興味深いのは、その資金調達からわずか2年で鉄道開業まで漕ぎ着けた点です。1872年(明治5年)に新橋~横浜間が開業すると利益的にも大成功。世論も手のひらを返したように賛成に回り、鉄道は全国へ延伸しました。物流網が発達し、経済も発展します。そして効率的な物流網を持つ日本は日清戦争に勝利し、戦後賠償金で八幡製鉄所が建設され・・・との流れになって行きました。
現在になぞらえるならば、DXやAIにスピード感を持って積極投資し、コストインフレが急速に進む中でも業務効率化に成功しているか・するか否かが、日本企業各社の将来への分岐点になるのかも知れません。実際、直近の決算でも、人件費や水光熱費、原材料費などが急上昇する中でも生産性を向上させ、利益率を改善させている企業が散見されました。有形無形の投資とその成否の見極め、資金調達のスピード感、投資計画を完遂させる実行力、それら次第で企業の将来価値は大きく変わることを、歴史に学ぶことで改めて強く認識しました。私の企業調査においても、各経営者の選択と実行が企業業績、企業価値へ与える影響を見逃さないよう、日々努めて参りたいと思います。
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