パースペクティブ(約3分)

2023年市場の見通し(グローバル債券)

平坦な道ではないものの、これまで債券市場が直面してきた圧力が緩和しつつあることから、2023年は魅力的な投資機会が訪れるでしょう。

2022年12月23日
Photo of Brooklyn bridge

著者

ポール・グレインジャー
ヘッド・オブ・グローバル・フィクストインカム&カレンシー
James Bilson
Fixed Income Strategist

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インフレ圧力の高まりと各国中央銀行の積極的な対応により、2022年は多くの資産クラスにとって厳しい年となりました。しかし、4つのポイントから債券の魅力度が高まっていると考えており、2023年は債券に対する投資家の需要が高まると予想します。

第一に、米国インフレの鈍化に牽引され、インフレ圧力に緩和の兆しがあることです。

第二に、経済成長の鈍化が特に米国において発生しています。

第三に、金利上昇に対する感応度が高い経済圏では、中央銀行による利上げサイクルの終了が近づいています。

最後に、債券の利回りは1年前と比較して大幅に上昇し、バリュエーションが魅力的となっています。

これらの要因が、世界の債券市場全体に魅力的な投資機会をもたらすことは間違いないでしょう。

インフレ圧力の緩和

インフレ率の上昇が2022年の債券市場の見通しを複雑にしましたが、2023年に向けては明るい兆しが見えています。過去1年半において財のインフレ率はインフレ率上昇の先行指標となってきましたが、これが反転し始めた明確な証拠、いわゆる「ブルウィップ」効果 (サプライチェーンの下流では需要量の変動が小さいのに対し、上流では必要以上に変動が大きくなること)が確認され始めています。

世界的な輸送コストやISM/PMI調査などの指標は以前からこの動きを指摘していましたが(図表1参照)、最近になってようやく公式のインフレ指標に反映され始めており(図表2参照)、2023年もこの傾向が続く可能性があると考えます。

 

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サービス・インフレが持続的であるため、米連邦準備制度理事会(FRB)の目標インフレ率の2%への道は最終的には困難となると考えていますが、2023年前半には初期段階の改善が比較的急速に進むと見込まれ、この動きが市場に温かく迎えられると考えます。そうなれば、世界の債券市場にとって好環境となり、債券価格のボラティリティ(変動性)が低下し、エマージング現地通貨建て債券・通貨等の資産にも投資機会がもたらされることになると考えます。

金融引き締めの経済成長への影響はこれから

2022年を通じて実施された金融引き締めの影響は、まだ主要な経済データに十分に反映されていないと懸念しています。住宅等の先行指標が急激に悪化しているにもかかわらず、個人消費や雇用などの遅行指標は、依然として底堅く推移しています。

今後数ヶ月の間に、特に米国において、金融引き締めの経済成長に対する影響がより鮮明に表れると考えています。この結果、中央銀行がさらなる引き締めを停止し、状況を再評価することになると予想されます。

これは世界の国債にとって明るいニュースとなるでしょう。ただし、インフレ圧力の緩和および債券価格のボラティリティの低下という追い風と、経済成長の減速が企業業績に与える影響という逆風が重なり、社債等の景気循環系の資産にとっては複雑な環境となると考えます。

 

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国や地域において経済状況の乖離が予想される

米国では金融引き締めの影響がまだ十分に現れておらず、2023年に影響がより明確になってくると思われるものの、他の地域では、主要な経済的逆風が弱まる兆しも見えてきています。

欧州のガス・エネルギー危機が終息したとまでは考えていませんが、危機の最悪期は過ぎたとみる、慎重ながらも楽観的な見方が台頭してきています。この小康状態が続いた場合、欧州経済への影響は懸念されていたより緩やかにとどまると予想されます。

債券市場の今後を見通す上でこの点は極めて重要であり、ドイツ国債の利回りの押し上げ要因となる可能性があります。

 

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中国の活動再開は欧州にとって更なる支援材料

ここ数週間に起こった中国のゼロコロナ政策転換のスピードに市場参加者は驚かされました。また、中国経済にとって特に重要性が高い不動産セクターが苦境に立たされていますが、当局が徐々に支援策を打ち出しています。

このような中国の政策が、2023年前半にどの程度のスピードと規模で変化するかについては、依然として不確実性が高いと考えるものの、中国経済への感応度の高い資産は今年既に中国経済の軟調な見通しを織り込んできたことから、投資家にとってポジティブ・サプライズとなるハードルは低いと思われます。

中国経済見通しにポジティブ・サプライズが生じた場合には、一部のコモディティ通貨やアジア通貨にとってサポートになると考えます。また、その場合、欧州に対する恩恵も大きくなるということは注目すべき点と言えます。

金利上昇に対する感応度が高い経済圏における利上げサイクルは縮小の可能性

最後に、世界的な金融引き締めのスピードと規模が、家計負債や住宅費用の対所得比率が高い経済圏により大きな影響を与える点について注目しています。このような国では、消費や住宅市場の脆弱性が相対的に高いことによって、中央銀行の利上げ継続が難しくなる可能性があるとみています。

スウェーデン、カナダ、英国等は相対的に脆弱性が高い一方、米国や欧州は相対的に低めだとみています。

 

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2022年は資本市場にとって困難な年となりましたが、債券市場では痛みが利回りの上昇につながり、バリュエーションの観点では非常に魅力的な環境になっています。

変化のタイミングを見極め、捉えることが重要です。上記に挙げた理由によって市場参加者のインフレへの注目が薄れ、悪化する経済成長に注目が集まり始めれば、世界の債券市場全体にとって魅力的なリターンが期待される良好な環境となるでしょう。インフレ圧力の鈍化の兆候が強まり、インフレの脅威が後退することは、まさに今、債券投資家が待ち望んでいることなのです。

そして、債券市場のボラティリティが利上げサイクルの成熟に伴って低下すると予想されることも重要な点であり、これも投資家に歓迎されることになるでしょう。

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ポール・グレインジャー
ヘッド・オブ・グローバル・フィクストインカム&カレンシー
James Bilson
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