シュローダーのESG投資にモーニングスターが迫る!
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(朝倉氏)
国内で新型コロナウイルスが問題になったのは2020年初頭からですが、その2020年5月にシュローダー・インベストメント・マネジメントの社長に就任されましたね。コロナとも闘いながらのこの2年間、振り返っていかがですか。
(黒瀬)
シュローダーの日本オフィスは100人ほどが在籍していますが、就任した当時は、出社している社員がわずか10人ほどでした。そんな特殊な状況でのスタートでしたが、逆に気づきもありました。当時デジタルツールは、私自身も含めて多くの社員が使いこなせていなかったのです。必要に迫られてTeams、Webex、Zoomといったオンライン会議システムを使うようになりました。弊社は英国ロンドンに本社があるグローバル企業で海外とのミーティングが多いため、オンラインは非常に効率的だと実感しました。
(朝倉氏)
金融機関、年金基金など御社の機関投資家のお客さまも、当初オンライン会議は不慣れだったかと思います。
(黒瀬)
当初は皆さま大変苦労されていましたが、この2年間ですっかり慣れてこられた印象です。インフラも次第に整ってきて、今は普通にオンラインでミーティングを行えています。
(朝倉氏)
ニューノーマル(新常態)といわれるようにコロナが少しずつ落ち着いてきた一方、今度は運用の世界がだいぶ変わってきたような気がします。いわゆる異次元金融緩和が行われて、影響が出てきていますね。
(黒瀬)
はい、これまで金融緩和が行われてきて、2022年からは利上げのフェーズに入っていますが、これだけ過剰流動性があるとマネーの行き場がポイントになってきます。インフレが既に足元で起こっていますから、今後の資産運用ではインフレヘッジがポイントになってくると思います。
(朝倉氏)
2021年はインフレ懸念から金利が上がり、債券の価格は下がり、株式も下がりました。債券と株式は、片方が下がれば片方が上がるから一緒に保有すればよいといわれてきましたが、両方下がってしまいました。インフレヘッジとしていろいろな投資商品が考えられますが、何に注目されますか。
(黒瀬)
実物資産に注目しています。2020年春のコロナショックで、世界的に株式が大きく下落した局面がありましたが、その後の金融緩和や財政政策で持ち直しました。翌年2021年の株式とリートの年間パフォーマンスをみると、リートの方が高パフォーマンスでした。そうした中、「シュローダー・グローバル・リートESGフォーカス・ファンド」を2021年5月に設定しました。インフレヘッジとして活用できる商品です。
(朝倉氏)
これまで各国の中央銀行がどんどんお金を刷ったために、足元ではお金があふれた状態です。当然、実物の価値は上がってしかるべきですので、その意味ではやっぱり不動産は注目でしょうね。
(黒瀬)
はい。不動産の中でも注目する業種はどんどん変わってきています。コロナ禍によって都心のオフィスでは空室率が上がり、一方で住宅については在宅勤務のためにもう1部屋欲しいという需要が出ています。都心から郊外へ移住して、一回り大きい家を探すといった需要もあります。諸外国でも同様で、特に米国では住宅の価格が上昇しています。動きがあるところに勝機がありますから、投資のチャンスがあると思っています。
(朝倉氏)
オフィスや住宅用不動産に動きがあるわけですね。コロナ禍を受けてeコマースも伸びていますが、その関連の不動産には動きがありますか。
(黒瀬)
かなりあります。倉庫など物流関連や、データセンターなどのデジタルインフラストラクチャーなどで、需要が高まっています。
(朝倉氏)
世界のリート市場全体についてはどうでしょうか。
(黒瀬)
実はリートの市場が発達している地域は意外と少ないのです。米国が一番発達していて、日本は15~16兆円の市場規模です。あとはオーストラリアでしょうか。欧州は市場としてはさほど発達していません。中国はリートが数銘柄できた程度ですし、東南アジアもわずかです。こうした背景から、「シュローダー・グローバル・リートESGフォーカス・ファンド」は、7割程度をリート、3割程度は株式に投資しています。株式は不動産の運営会社などです。グローバルのリートに加え、不動産関連の株式にも投資することで、リートが発達していない地域の不動産セクターの成長も期待できる商品です。
(朝倉氏)
ファンド名にESGと入っていますが、ESGとは環境(Environment)、社会(Social)、ガバナンス(Governance)を指しますね。似た言葉にSDGsなどもあります。環境や社会を意識した投資手法は当然存在してしかるべきだと思いますが、リートの世界でESG重視というのは珍しいのではないですか。
(黒瀬)
珍しいと思います。欧州には、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)というESG投資に関連する開示規則があります。その中で、サステナブル投資を目的とする第9条という、最も基準の厳しいカテゴリーに該当するファンドは全部で10本もありません。その一つが「シュローダー・グローバル・リートESGフォーカス・ファンド」の主要投資対象ファンドです。実は、不動産・建設セクターは世界の二酸化炭素排出量の38%を占めています。ESGのE(環境)のためには、不動産・建設セクターにおける排出量の削減は重要です。
(朝倉氏)
もともとSDGsやESGの流れというのは、御社の拠点がある欧州がリードしていて、その動きが米国や日本にも波及してきました。日本も2050年に向けて脱炭素という目標を掲げ、身近なところではレジ袋の有料化などもあって、投資の世界でもESGというのは避けて通れないものになりましたよね。
(黒瀬)
はい。アクティブ運用全てがESGを加味した投資であるべきだと思っています。シュローダーでは2020年の段階で、株式、債券、プライベートアセットを含めた全ての運用資産において、ESGインテグレーション(ESGの要素を明確に運用プロセスに組み込んだ運用手法)を完了しました。
(朝倉氏)
我々は評価会社ですので様々なESGファンドを見ていますが、資産運用会社には口先ばかりでないカルチャー、哲学や理念が重要だと思っています。シュローダーはまさにESGという考え方が会社全体に浸透している会社ですね。国連責任投資原則(PRI)によると、6年連続でA+という高い評価ですね。6年連続とはすごいですね。
(黒瀬)
現在のシュローダーのCEOが環境や社会に対して強いコミットメントを持っていますので、グループ全体でこの流れはどんどん加速しています。シュローダーは、この10年で10社ほど買収しています。ESGに関連する最近の動きとしては、「ブルーオーチャード」という会社が傘下に入りました。この会社は、環境や新興国のマイクロファイナンスなどに関連した投資を行っています。さらに2022年は、「グリーンコートキャピタル」という会社も傘下に入りました。この会社は代替エネルギーや再生可能エネルギーなどに特化した運用会社です。再生可能エネルギーが注目されている中、お客さまからの問い合わせが増えている状況です。
(朝倉氏)
シュローダーは歴史が長く、会社の哲学や思想がしっかりとありますから、いい会社が周りにどんどん増えていきそうですね。
日本初のESGに着目したリート・ファンドを設定
(朝倉氏)
2021年5月に「シュローダー・グローバル・リートESGフォーカス・ファンド」が設定されました。その概要を教えていただけますか。
(黒瀬)
おかげさまで2022年3月には販売会社が10社程度となり、純資産総額も200億円程度と、どんどん拡大している状況です。2021年のマーケットはグローバル株式一辺倒かと思ったら、実はリートの方がパフォーマンスが良かったということで、かなり純資産総額が拡大しました。2022年のテーマは、1月は利上げといえます。利上げ観測が出てくると、やはりリートは影響を受けます。ただ、1月は株式も、特にテクノロジー系が下落しました。2月のテーマは戦争ですね。2月24日にロシアがウクライナに侵攻したことで、株式市場も混乱して激しく乱高下しました。その後、3月からリートはパフォーマンスが回復しています。「シュローダー・グローバル・リートESGフォーカス・ファンド」の基準価額についても、1月は単月で8%ほど下げましたが、2月は単月で0.24%、非常に値持ちがいいという状況です。
(朝倉氏)
基準価額もしっかりしていますしね。
(黒瀬)
はい。ファンドの主要投資対象ファンドは、欧州のESG投資に関連する開示規則である、サステナブルファイナンス開示規則(SFDR)の中で最も厳しい第9条に該当しており、ESGに配慮した投資をしていることも評価していただいているのではないかと思います。
(朝倉氏)
リーマンショックからずっと異次元金融緩和が続いてきました。コロナ禍の2年間でいっそう異次元になって、まるでインデックス相場といえるほど、どの銘柄も上がるような状況でした。しかし、企業業績が良くなっていないのに株価だけが上がるのはおかしいということで、選別が行われるようになってきました。先ほどお話がありましたように、リートにも様々な種類があり、当然玉石混淆があると思います。その中でESGに配慮したリート、特にE(環境)にフォーカスしたリートというのは価値が出てくるような気がしていますが、そういう見通しで大丈夫でしょうか。
(黒瀬)
もちろんです。例えば環境や社会に配慮した不動産だと証明するには、グリーンビルディングという認証があります。もしシュローダーの日本オフィスを移転することになったら、移転先はグリーンビルディング認証を取得した物件にしたいと思っています。このような不動産選びの視点は、先進国に共通しています。そのためには、リートが保有している個別物件を、詳細に分析することが大切になってきます。「シュローダー・グローバル・リートESGフォーカス・ファンド」は、18万件もの個別物件の情報をデータベース化しているのです。
(朝倉氏)
18万件ですか。まさにビッグデータですね。
(黒瀬)
おっしゃるとおりです。リートが保有している個別物件を見ています。単にリートや不動産関連会社のパフォーマンスを見るだけではなく、保有している個別物件がESGの基準を満たしているのかまで確認しているのが、当ファンドのポイントのひとつです。
(朝倉氏)
個人の投資家がいちいち個別物件を見てまわることは不可能ですからね。日本国内でさえ無理ですし、海外の物件もあるわけですから。再生可能エネルギーを導入する住宅に補助が出たり、住宅ローンの金利が安くなるなど、住宅用不動産もどんどん環境配慮が進んでいます。ESGの観点で価値が上がる住宅が出てきて、それらをビッグデータを使って選別しているのがこのファンドなのですね。
(黒瀬)
そうです、選別投資がポイントです。財務データだけではなくて、個別物件まで見て非財務データまで確認します。日本を含む主要先進国が、2050年に向けて二酸化炭素などの温室効果ガスの排出を実質ゼロにするネットゼロを目指している中、ESG投資、特に環境に配慮された投資は、大きな潮流に乗っているといえます。
(朝倉氏)
「リサーチのシュローダー」と呼ばれるほどのリサーチ力があればこその商品ですね。日本の投資家、特に個人投資家にはリートは人気のある資産です。グローバルでしかもESGの観点を加味したリートというのは今までありませんでしたから、日本の投資家にとっては朗報ですね。
(黒瀬)
ありがとうございます。
(朝倉氏)
ESGに取り組んでいる会社は長期的にサステナブルで、他の会社よりもアウトパフォームするという判断で投資されていると思います。半年や1年ですぐ結果が出るわけではありません。ですから、私がよく提言している長期積立分散がやはりおすすめですね。特に若い方は積立投資で購入されるのがいいと思います。まとまったお金がなくても、今は少額でも積み立てできますから。
(黒瀬)
まさに積立投資にも適した商品だと思います。リートはインカムゲイン(配当収入)もキャピタルゲイン(値上がり益)も狙えます。その辺をバランスよく配分したのが、弊社の商品です。ぜひ長期投資で考えていただければと思います。
(朝倉氏)
このファンドは資産成長型と予想分配金提示型という二つのタイプがありますね。資産成長して伸ばしていくには資産成長型、ご年配の方など定期的に分配金が欲しい方は安定したインカムの中から分配金を受け取ることができる予想分配金提示型が良さそうですね。
(黒瀬)
そのように使い分けていただければと思います。予想分配金提示型は無理に分配金をお支払いすることにはなりません。基準価額が上昇した分からだけの分配ですので、そういった点でも現代の投資のあり方に即しています。
(朝倉氏)
ニューノーマル(新常態)の時代で、資産運用もなかなか困難です。もし日本で預金金利がさほど上がらず、物価だけがどんどん上がると、預金は目減りし購買力が落ちてしまいます。ですから、何かしら投資をしていく必要があります。そんな中で良い商品を立ち上げていただきました。このファンドは、ポートフォリオの一部として組み入れていただくのがいいでしょうか。
(黒瀬)
はい、これだけを単品で投資するよりも、ポートフォリオの中に組み込んでいただくのがいいかなと思います。インフレは長期化しそうですから、不動産という実物資産に投資するのは、インフレヘッジできるという強みがあります。不動産は、日本だと借り手優位ですが、米国や他のアジアの国は異なるのです。貸し手優位なので、インフレの状況下では家賃を毎年上げることができる、プライシングパワー(価格決定力)があるのがこの不動産セクターです。非常に時代にマッチした商品だと考えています。
(朝倉氏)
最後に投資家の方にメッセージをぜひお願いします。
(黒瀬)
今後のマーケットを考えると、インフレの長期化が一つの大きな流れだと思います。本日の対談の中でも何度か申し上げたとおり、リートはインフレヘッジとして活用できます。不動産はプライシングパワー(価格決定力)があるという点でも面白い資産だと思います。脱炭素社会に向けて、ESGのコンセプト、特にE(環境)が大きなトレンドになっています。そこを捉えて投資を行うのが、「シュローダー・グローバル・リートESGフォーカス・ファンド」です。ぜひご注目いただきたいと思います。ちなみに、個人的にもこのファンドに投資しています。
(朝倉氏)
投資家と同じ船に乗るという決意表明ですね。ぜひ引き続き、投資家の皆さんのために頑張っていただきたいと思います。本日はありがとうございました。
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