インフォーカス(約6分)

「D」が導く新時代:関連用語集

脱炭素化(Decarbonisation)、人口動態(Demographics)、脱グローバル化(Deglobalisation)の3つの「D」は、新時代への転換を加速させるように見えます。これらのトレンドが世界経済にどのように影響を与えているかを理解するための用語について概説します。

2023年11月29日
Economic strategy viewpoint

脱炭素化(Decarbonisation)、人口動態(Demographics)、脱グローバル化(Deglobalisation)の3つ大きな潮流は、世界経済に長期的な影響を与えると予想されます。

重要な点は、「3つのD」は、中央銀行の政策に影響を与え、その結果としてインフレ率の上昇と不安定化をもたらし、成長に連鎖的な影響を与えることです。私たちはこれを新時代への転換点と考えています。人口動態的な脆弱性、グローバル化の恩恵の減少、そして脱炭素化のトレンドによって、各国の中央銀行に成長よりもインフレ対策を優先するよう圧力がかかり続ける可能性があります。したがって、新たな経済構造は、いわゆる「インフレと成長のトレードオフ」(用語リストの最後にある「インフレーション」の項を参照)の復活によって大きく定義されるものと考えられます。これらのトレンドが長期的にインフレにどのように影響するかを理解するには、投資家は、鍵となるいくつかの経済用語を知っておく必要があります。以下、関連の用語をまとめましたので、ご覧ください。

脱グローバル化(Deglobalisation)

グローバル・バリューチェーン

グローバル・バリューチェーンの構築には、さまざまな生産段階を分解し、多くの場合、それらを異なる経済圏/地域に配置するという長いプロセスが必要であった。これによって、コストの削減、規模の経済、専門化、効率性の向上といったメリットがもたらされてきた。

サプライチェーンのグローバル化モデル

グローバル・バリュー・チェーンに基づく経済システムを指す。このシステムは、1990年代から2000年代初頭にかけて最盛期を迎えたグローバリゼーションの流れの結果として発展した。中国はこのシステムの中心に位置し、しばし製造業において「世界の工場」と呼ばれるほどであった。

ニアショアリング/フレンドショアリング

生産拠点を遠くの国から近くの国(ニアショアリング)、あるいは政治的同盟国とみなされる国(フレンドショアリング)に移すこと。これらの傾向はいずれも、サプライチェーンの拡大、国際貿易、グローバリゼーションというグローバル化モデルからの部分的撤退を意味する。インフレを伴わず持続的に経済成長している時期(NICE)は、グローバル化が大きな原動力となっていた。1990年代後半に始まったNICEは、定した成長、安定した失業率の低下、先進国における低く安定したインフレを特徴とした。

オフショアリング

多国籍企業が生産拠点を先進国から発展途上国に移転するプロセス。1980年代から2000年代初頭までの間は、非常に成功した企業戦略であった。

オンショアリング

オフショアリングの逆で、生産拠点を元の先進国に戻すこと。

保護主義

税制、関税、規制などによって、外国企業を差別し、自国企業を優遇する政策。

世界経済秩序

世界経済の主要な側面を管理する多国間協力組織に基づく第二次世界大戦後の経済体制。その結果、世界貿易機関(WTO)の統治下で国際貿易が急速に発展した。

脱炭素化(Decarbonisation)

炭素国境調整メカニズム(CBAM)欧州連合の気候政策枠組の重要な側面。EUに輸入する企業に対し、いわゆる「CBAM証明書」を購入させ、生産国で支払われる炭素価格とEU排出権取引制度における炭素排出枠の価格との差額を支払わせる。

カーボンプライシング

炭素排出量削減にインセンティブを与える制度。EU排出量取引制度のような「キャップ・アンド・トレード」制度や、炭素国境調整メカニズムのような炭素税の形で、汚染に価格をつける。

脱炭素/エネルギー転換

国が石油・天然ガス・石炭などの化石燃料を動力源とするエネルギーシステムから、風力や太陽光などの再生可能エネルギーを動力とするエネルギーシステムへと移行するプロセス。

EU排出量取引制度(EU ETS)

EU排出量取引制度は、世界初の主要な、最大級の炭素市場である。この「キャップアンドトレード」制度は、一定のセクターの産業設備から排出される排出量を制限するものである。

フォシルフレーション

化石燃料に関連したインフレ。多くの経済がエネルギー転換を完了する前に化石燃料に大きく依存することになる今後10年間に、炭素価格の厳格化の結果として発生する。

グリーン補助金

カーボンプライシングによって炭素に価格をつける代わりに、グリーン補助金によりイノベーションを促すことで、炭素排出量の削減を促進すること。この政策は米国などで採用され、インフレ削減法に基づいてグリーン補助金が導入されている。

グリーンテクノロジー

炭素回収・貯留、新輸送インフラ、スマート電力網、持続可能な水素など、エネルギー転換に不可欠なグリーン経済を構築する必要のある分野。

グリーンフレーション

エネルギー転換に必要な主要鉱物の不足から生じるインフレ。

人口動態(Demographics)

従属人口指数

生産年齢人口に対する若年・高齢者人口の割合。生産年齢人口の減少が賃金コストの上昇を招いている中国をはじめ、多くの先進国や発展途上国で上昇している。

人工知能(AI)

通常、人間の知能を必要とする作業をコンピュータに行わせる技術。

自動化

労働力の入手可能性の低下とコストの上昇は、特にリショアリングのトレンドが加速する先進国において、スマート・ロボティクスを含むロボティクスを使用したプロセスの自動化への投資を企業に強いる可能性が高い。

団体交渉力

労働者が労働組合を通じて使用者と契約交渉を行い、雇用条件を決定するプロセス。団体交渉力は、多くの先進国では一般に1970年代から1980年代にかけて、また一部の欧州大陸諸国では2011/12年のユーロ圏ソブリン債務危機まで、労働市場の重要な特徴であった。後者については、債務危機は競争力をめぐる問題を前面に押し出し、より柔軟な労働市場をもたらす労働の全面的改革を推進した。債務危機は、多くの欧州諸国が、輸出の増加を通じて成長を刺激し、財政余力を改善するために、競争相手と比較して労働コストを削減しなければならなかったことを浮き彫りにした。

財政余地

政府が資金調達や国債の持続可能性を損なうことなく、裁量によって財政政策(税と支出に関する政策)を実施できる余力をさす。

柔軟な労働市場

柔軟な労働市場は、1990年代半ばから2000年代初頭にかけての「NICE」(Non-Inflationary Consistently Expansionary)時代を支えるのに役立った。多くの先進国における労働市場の改革は、インフレと賃金の関係を断ち切るのに役立った。多くのエコノミストが、先進国の労働者の団体交渉力が一般的にはるかに強かった1970年代や1980年代のようなインフレが起こりやすい時代の再来を予想していない理由の1つは、労働市場の柔軟性の向上である。

労働力人口比率

労働参加率は、16歳以上の人口のうち、働いているか、積極的に仕事を探している人の割合を示す。パンデミック以降、労働参加率が低下し、多くの人々が退職に追い込まれたり、健康上の理由で経済活動を休止したりした結果、多くの先進国で労働力不足が生じ、インフレの重要な要因となっている。

スマートロボティクス

ロボット工学とAIを組み合わせて、独立して動作し、他の機械と通信できる機械を作ること。

サプライサイド・ソリューション

移民規制を緩和することで、多くの先進国で労働力不足を解消できる可能性がある。しかし、ブレグジット後の英国やトランプ後の米国に見られるような、より保護主義的な政策への移行に伴い、その実現はますます困難になっていると考えられている。

生産年齢人口

生産年齢人口は一般的に、15歳から64歳までの人口が総人口に占める割合として定義される。

インフレ

コアインフレ率

食料やエネルギーの価格を含まないコアインフレ率は、それらの変動要素を含む消費者物価指数よりも、基本的な物価動向を測定するのに適している。

インフレと成長のトレードオフ

インフレ率を低下させ、物価の安定を回復させるためには、金利を上昇させ、経済活動を鈍化させる必要がある。

ローフレーション

2007~2008年の金融危機以降、多くの先進国でデフレ(物価下落)の脅威にさらされ続けた経済体制を指す。

物価安定

低水準で安定したインフレは、企業が安心して投資や事業拡大を行うための最良の条件を作り出すことで企業に利益をもたらし、金利が抑制されることで消費者、企業、政府のすべてに利益をもたらした。

サービスインフレ

サービスインフレは人件費によって支配され、インフレ圧力が外的要因や一過性の要因の結果ではなく、国内経済にどの程度根付いているかを示す指標となる。

スタグフレーション

成長の減速とインフレ加速の両方が生じる状態。過去には、インフレと成長率が鈍化し始めた後にも労働者が賃上げを達成したため、賃金価格スパイラルが発生し、物価の安定が失われた後に発生した。1970年代から1980年代にかけて、多くの先進国経済がインフレに陥りやすかった理由のひとつがこのスパイラルであった。これは、一般的に、労働者の団体交渉力が非常に強くなった結果でもある。

Topics