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ハイイールド社債市場における重要な投資判断(BB or not to B?)


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調整局面は来るのか?

このハイイールド市場の上昇は非常な割高水準にまで達しましたが、同時に数々のマクロレベルのリスクも上昇しています。このことは、それほど遠くない将来において市場の調整局面が訪れる可能性が高いことを示唆しています。現在、以下の2つのリスクが顕在化しています。

  1. より長期的なインフレ:現在のインフレ圧力は一時的なもので、ある時点で自然に適切な水準に戻るという見方が市場を占めておりますが、これは楽観的な考え方かもしれません。エネルギーや素材価格の急騰は恐らく供給不足による一時的なものですが、賃金や帰属家賃などの分野では現在の水準が持続する可能性が考えられます。
  2. 後手に回る中央銀行の対応:ベストシナリオは、米国では12月、欧州では3月に緩やかな資産買い入れの縮小が開始されるという中央銀行のガイダンスを市場が受け入れることです。最悪のシナリオは、市場が量的緩和政策が無期限に継続すると考えることです。この場合、緩やかなテーパリング(量的緩和縮小)が実施され、テーパー・タントラム(量的緩和の縮小懸念を背景に市場から資金流出すること)が生じないとする市場の想定を、高進するインフレが覆すリスクがあります。

これらの2つのリスクは、現在多くの国が多額の負債を発行し、高水準の財政赤字を抱えていることと密接に関連しています。これらの国々は金利を恒常的に低く抑える必要がありますが、もし低インフレと金融緩和政策という環境が崩れた場合、投資家は国の負債の持続可能性に不安を抱くことになるでしょう。

欧州の優位性

市場に混乱が生じた場合、欧州ハイイールド社債は他の市場に対してアウトパフォームする可能性が高いと見ています。企業収益が増加しバランスシートの健全化が進んでいることから、欧州ハイイールド社債のデフォルト率は低位であり、さらに低下傾向にあります。そしてハイイールド社債の中には、市場の評価以上に質が高い、あるいは低リスクの発行体が含まれているのです。以下でもう少し詳細に説明いたします。

まず1点目として、現在のデフォルト率は低位であり、格付機関であるMoody’sによると今後12か月において2%以下まで低下することが予想されています。デフォルトはハイイールド社債にとって主要リスクの一つですが、現在の見通しは良好です。

2点目として、経済回復は企業の増収に拍車をかけ、バランスシートを強化し、デフォルトリスクの低下をもたらしました。 レバレッジ(利息、税金、減価償却および償却前の収益に対する純負債)は約3.5倍であり、2017年以来最低の水準です。

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そして3点目としては、ハイイールド債が依然として「ジャンク債」と称されることがあるものの、欧州の非投資適格社債市場においては、質が高いBB格債券の比率が70%を占めているということです。

例えばBB格の債券には、収益性が高く、安定したサブスクリプションベースのメディア・テレコム事業を行う英国のヴァージン・メディアのシニア担保付き債券や、英国ナットウェストグループなど十分な資本を有する銀行の劣後債などが含まれます。

投資価値はどこにあるのか?

投資価値を見出せるのは、ハイイールドの中でも質の高い領域であるBB格です。現在BB格の平均スプレッドは、投資適格で最も格付けが低いBBB格の平均スプレッドの約3倍の水準となっており、このスプレッド格差はリスクに対し不当なまでに拡大しています。

個別企業の観点で、BBBとBBの相違を見ると、例えば小売セクターではテスコ(BBB格)対アスダ(BB格)、自動車セクターではフォルクスワーゲン(BBB格)対シェフラー(BB格)ということになります。

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現在記録的な高水準にある株式、投機的に引き上げられたコモディティのバリュエーション、そしてゼロ近辺もしくはマイナス利回りにある多くの国債と比較して、欧州ハイイールド社債は資産配分の点から適切な位置にあると見ています。

具体的な投資機会はどこにあるのか?

コロナ危機はセクターの騰落率及びバリュエーションに大きな乖離を生じさせました。この乖離はある程度解消されたものの、コロナ禍において家計貯蓄が積みあがっていることを考慮すると、経済活動の再開に伴い恩恵を受ける業種に投資機会があると見ています。特に先進国においては、貯蓄は大幅に増加しており、消費者はコロナ禍をくぐり抜け購買意欲が回復していると考えます。

そのため、運用においては消費セクターに焦点を置き投資機会を模索してきました。例えば、ビルケンシュトックは有名人や一般市場で人気のドイツのサンダルメーカーで、多額の負債があるものの、得意顧客基盤を有し、キャッシュフローはプラス、マージンも例外的な水準の魅力的な企業です。

コロナ危機からの回復

コロナ危機後の回復に関しては、英国市場についても可能性があると見ています。クルーズ業界は2020年のコロナ危機において最も影響を受けた業界の一つですが、この中には50代以上の顧客を対象としたクルーズ旅行や保険商品を提供している英国のサガが含まれます。コロナ禍において、レジャー・旅行が一切無くなり、同社の債券の価格は半分程度にまで下落しました。

同社の保険ビジネスに関する投資家の懸念はある意味理解できるものでしたが、その市場価値については過小評価されることとなりました。経済活動の再開と旅行業の回復による恩恵への期待から、同社には新株予約権無償割当として1億5000万ポンドが投資されました。同社は最近リファイナンスを行い、より魅力的なクーポン水準での新発債を発行しました。

他では、英国のパブやレジャー系企業においても投資機会があると見ています。これら企業は経済活動の再開で恩恵を受けます。また、発行する債券の多くは不動産や輸送インフラなどの実物資産を担保としており、発行体がデフォルトの危機に瀕した際に債券投資家がこれら実物資産への請求権を有している比較的安全な資産といえます。

最後に、インフレショックとサプライチェーンの混乱を背景に、コンテナ貨物輸送業においても投資機会がみられています。人々の生活が通常に戻るにつれ、物的商品の需要が高まり輸送料金は高騰しました。CMAという企業では、堅調な収益とバランスシートの劇的な改善があったものの、市場や格付機関における同社への評価が改善するのに時間を要しました。

 

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