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ESG四半期レポート 2022年第3四半期


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紛争下の現代奴隷制

なぜ、この問題が投資家にとって重要なのか?

紛争が人々の移動に比類ない影響を与え、生活や安全が大きく損なわれることは広く知られています。ロシアによるウクライナへの侵攻はその例です。2月24日にロシアによる侵攻が始まって以来、ウクライナは近年の歴史の中で最も速いペースで人々が流出する事態を目の当たりにしてきました。現在までに、ヨーロッパでは630万人の難民がいるとされています。足元ではウクライナの人々が母国に戻っているケースもありますが、紛争によって極端な人の移動が引き起こされ、ヨーロッパにおいて相当数の難民を受け入れる必要が生じています。

現代の戦争の90%において、現代奴隷制と人身売買が存在しています。これは、難民が国境を越える際に人身売買業者に連行されたり、合法性や安全性を確認することなく宿泊施設や仕事のオファーを受けたりするなど、さまざまな要因が絡み合っているためです。難民の脆弱性は、人口動態的な要因によってさらに悪化することが多く、特に女性と子どもは避難民に多く含まれます。そのため、難民を受け入れている地域で事業を行う企業は、自社の事業やサプライチェーンにおける労働搾取の新たなリスクを認識する必要があります。

欧州各地でデューデリジェンスの義務化が相次ぐ中、現代奴隷制などの人権侵害に対する注目と監視の目が高まっています。具体的な民事責任や金銭的な罰金が見え始め、道徳的な義務とともに、国連の「ビジネスと人権に関する指導原則(UNGPs)」に沿った行動をとることへの推進力が、かつてないほど高まっています。

投資家はこの問題にどう取り組むべきか?

シュローダーのエンゲージメント・ブループリントでは、企業に対して、UNGPsや国際労働機関(ILO)、その他の国際的な枠組みに沿った人権方針を策定・実施し、人権の尊重にコミットするよう求めています。また、堅牢なデューデリジェンス・プロセスと効果的な救済措置を導入するよう求めています。

しかし、紛争地域やその周辺での人権に関連するリスクが高まっているため、私たちは、企業がこれ以上のことを行うことを期待しています。そのためには、既存の方針を紛争の影響を受ける地域特有のニーズに適合させ、デューデリジェンスを強化することが必要です。そのような行動には以下が含まれます。

  • 実際の、そして潜在的な人権への影響を評価すること
  • 調査結果を統合し、それに基づいて行動すること
  • 対応を追跡すること
  • 影響がどのように対処されたかを伝えること

この問題に取り組もうとする投資家は、出発点として、2つの簡単な質問を企業に投げかける必要があります。

  1. 移民労働者の流入によって、貴社のサプライチェーンはどのような影響を受け、また、現代奴隷制の関連リスクをどのように評価しているか?
  2. リスクの高まりを受けて、どのようなデューデリジェンス・プロセスを強化しているか?

エンゲージメントのケーススタディ

トルコの衣料品メーカー:

トルコでは、特にシリアからの移民の流入に関連して人権リスクが高まっていることを認識し、2020年にトルコの衣料品メーカーに対し人権に関する方針と実践についてエンゲージメントを開始しました。同社はこのテーマについて比較的初期段階にいたため、情報開示を増やし、責任ある調達慣行を順守していることを示すよう促すことから始め、基準を改善するための業界イニシアチブに参加し、関連するNGOやステークホルダーグループと協働することにしました。私たちのエンゲージメント以降、同社がサプライチェーンのコンプライアンスとモニタリングの目標を設定し、基本的な監査データの報告を開始したことは喜ばしいことです。

台湾の企業:

2022年、私たちはミャンマーに進出している台湾の企業に対しエンゲージメントを実施しました。同社は、ESG要素のうち人権をサプライヤーの管理業務に取り入れる方向で前進していました。私たちは、行動規範に署名するサプライヤーを増やすために、同社がどのような行動を取るのかを理解するよう努めました。また、監査範囲を拡大するよう同社に働きかけました。私たちは、今後数年間、これらのテーマについて同社とのエンゲーメントを続けていきます。

欧州の人材派遣会社:

最近、欧州で事業展開する人材・雇用サービス業の企業2社とエンゲージメントを開始しました。雇用・派遣会社は、故郷や元の職場から離れ、急いで仕事を探している人々と接する可能性が高いことから、この業界はリスクが高いと判断しました。このエンゲージメントでは、これらのリスクを予測し、対処するために企業がどのように行動しているかを理解すること、つまり、応募者と最終雇用主に対してデューデリジェンスが実施されていることを確認することを目的としています。

サステナビリティに関する報告について、アップル社に対してどのように督促しているか

2022年7-9月期、当社のサステナブル投資チームは、米国のハイテク企業であるアップル社に対し3度エンゲージメントを実施し、環境と社会に関する多くのテーマについてより明確な説明を求め、また、それらの情報開示を拡大するよう働きかけました。

当初、私たちはインベスター・リレーションズ(IR)にレターを書き、同社が気候変動への取り組みの多くの側面でリードしていることを認めました。また、気候変動に関する目標や2030年以降の長期計画のニュアンスについて、いくつかの疑問点を指摘しました。人権に関しては、アマゾンで違法に調達された金をサプライチェーンで使用しているという最近の報道を踏まえ、デューデリジェンス・プロセスの有効性をどのように評価しているか、より詳細な情報を求めました。最後に、インターネット分野の人権NGOであるRanking Digital Rights(RDR)の2022年RDR Big Tech Scorecard1の提言に言及し、これを実施する計画について質問しました。

その後、IRチームとミーティングを行い、気候変動(特に循環型経済)、人権、多様性についてのさらなる行動を同社に働きかけました。私たちは、アップル社が「ネットゼロ」ではなく「カーボンニュートラル」の目標を設定した理由について議論しましたが、同社はほぼ同じと見ていると説明しました。これを受けて、私たちはオフセット戦略を明確にするよう求めました。また、同社の人権デューデリジェンスプログラムについても議論しました。最後に、同社のスピークアップ・メカニズムを理解し、インクルージョンに関する情報開示を改善するよう要求しました。

会議では、以下に示すような会社の目標が確認されました。

  • デジタル著作権に関するRDR Big Tech Scorecardの勧告を実施する
  • 従業員のダイバーシティ&インクルージョンに関する指標を開示する
  • 内部通報制度で提起された問題を開示する
  • 長期的な気候変動への取り組みを伝える
  • 明確なリサイクル/再資源化目標を設定する

私たちは、エンゲージメントに適した、あらかじめ定義されたSMART(具体的、測定可能、達成可能、現実的、時間的制約のある)なエンゲージメント目標を設定することを目指します。そして、少なくとも年1回、エンゲージメントの優先順位と課題または保有資産の重要性に応じて適切な頻度で、エンゲージメント目標に対する進捗を定期的にモニターしています。ただし、目標達成までの期間は、その性質によって異なり、また、重要な戦略的変更は、企業のビジネスプロセスに導入するのに時間がかかることを認識しています。

ミーティング後、アップル社の要望により、同社のESGプログラムについて詳細なフィードバックを行いました。気候に関する目標については、その長所を指摘しましたが、ここでも私たちの目標を繰り返し述べ、同社が製品の循環性に関する取り組みをよりリードする機会があると伝えました。人権に関しては、より成果に基づいた情報開示の機会を指摘しました。また、ダイバーシティ&インクルージョンに関する情報開示を再度要求し、最後に、給与にESG指標を含める企業が増えていることを説明し、これはアップル社にとってチャンスとなり得ると述べました。

私たちは、今後数カ月にわたって、私たちが設定した目標に対するアップル社の行動についてエンゲージメントとレビューを実施し続けていきます。

1:https://rankingdigitalrights.org/index2022/

 

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